2007年12月31日 (月)

27冊目 恐怖の存在

「我々は環境問題の各方面について驚くほど実態を知らない」。 マイケル・クライトン(ハヤカワではマイクル・クライトンと表記)の「恐怖の存在(上・下巻)」を紹介します。

恐怖の存在 マイケル・クライトン著(ハヤカワ文庫)  

 

 

評価:星3つ ★★★

マイケル・クライトンが本作(State Of Fear)を発表したのは2004年だそうです。 地球温暖化といえば今では誰もが知っている問題で、二酸化炭素排出権ビジネスまで一般的に認知されるほどですね。

本作では、気象災害を引き起こす環境テロリストの陰謀を食い止めるというストーリーを展開しながらも、「地球温暖化説は単なる仮説で立証されていない」、と作者の意見が打ち出されています。

詳しくは本を読んで欲しいのですが、世界の平均気温と二酸化炭素濃度は確かに上昇しているが、それが二酸化炭素による、いわゆる「温室効果ガス」によるものとは断定できていないというのです。

また、世界の平均気温の測定方法や海面の上昇の測定方法に色々な不確定要素があることや、果たして南極の氷は溶けているのか?といった様々な疑問が作中の人物の口を借りて語られます。

ここまで聞くと、環境問題に敏感な人ならば、「けしからん!」となってしまうかもしれません。 しかし、マイケル・クライトンは環境保護をしなくても良いとか、二酸化炭素を排出しても問題ないとか、そんなことを言っているわけではありません。

さらに言えば、地球温暖化現象を否定しようとしているわけでもないのです。 ただ、「地球温暖化」というキーワードが出るとそれに反論すること自体がタブーとされ、科学的な議論もないがしろにされていることに危惧しているのです。

マイケル・クライトンが作中で「恐怖の極相」と表現する民衆を恐怖という道具でコントーロールしていくこと、それを行っている政治・法曹・メディアの複合体に対する注意喚起こそがこの作品が伝えたい部分なのです。 なんだか、マイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン}を思い出しますね。

まあ、マスコミやみんなが言っているから、というだけで鵜呑みにするのは危険ですよね。

ただ、マイケル・クライトンも偏った書き方を昔からするので、「?」な部分もあったりします。 日本人としては「ライジングサン」なども偏見で書かれた問題作ですよね(w 

ともあれ、ストーリー自体もスピーディーな展開のアクションで、先を読ませる魅力は十分あります。 まあ、ハリウッド映画にありがちなストーリーではありますが、なかなか楽しめました。

関連サイトとして下記にワシントンDC開発フォーラムへのリンクも載せました。この作品に対する反論や、問題点が記載されています。 まあ、ざっと読むと、個々の細かい問題にしか反論できていないようにしか見えませんが。

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22冊目 「緊急の場合は」

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ワシントンDC開発フォーラム・環境ネットワーク

恐怖の存在(上巻)

恐怖の存在(下巻)

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2007年9月27日 (木)

26冊目 極大射程

今回はスティーブン・ハンター著、「極大射程」(上・下巻、新潮文庫)を紹介します。 題名からも想像つくように、スナイパーが主人公の軍事・アクションものです。

映画化もされていて、「ザ・シューター」という名でレンタルビデオにも今並んでいます。この感想を書く前に一度見てみたかったのですが、先週は三連休だったせいかすべて貸し出し中で見れませんでした。

「極大射程」新潮文庫 

 

 

 

評価:星3つ ★★★

物語は、退役軍人で名狙撃手だった、ボブ・リー・スワガーが山の中で静かに鹿を待ち伏せするシーンから始まります。 戦友を失い、自らも重傷を負った挙句、ベトナム戦争への批判も追い討ちとなって、今では人との関係を絶って山奥に暮らしているのです。

そんなボブの元に腕の確かな狙撃手に新開発の弾丸を試射して欲しいとの依頼が舞い込みます。 相手が見かけどおりの組織ではないと疑いながらも、軍を退役した原因でもあり、相棒のかたきでもある敵スナイパーに仇討ちをできる機会をちらつかされ、再び山を降りたボブは国家レベルの陰謀に巻き込まれていく・・・。

巧妙に仕組まれた陰謀からどのように逃れるのか、そして復讐は叶うのか。 軍事ものが嫌いな人はともかく、先を早く読みたくなる展開が続いていきます。

何百メートルも先から標的を狙うスナイパー。 狙撃ポイントの選び方やライフルのことなど、狙撃に関する知識もちりばめられ、なかなか面白かったです(もっとも、軍事マニアな人たちからすれば、色々問題があるようですけれど・・・)。

ただ、ボブ・リー・スワガーが超人的な強さで常に敵を圧倒しつづけるところはやりすぎかなぁと思ったりします。 特に後半、一人で軍の1部隊を撃退するのはどうかと・・・・最後の敵もあっけなくやられてしまいます。 まあ、爽快感はありますが。

どちらかというと、先に敵の手口が明らかにされて、その巧妙な罠をいかにしてボブが切り抜けるか、といった楽しみ方でしょうか。 なんか、刑事コロンボみたいだなぁ・・・(w

数奇な運命からボブと行動をともにするようになるのは、FBI捜査官のニック・メンフィスで、過去狙撃を失敗して人質の女性を半身不随にしてしまった辛い過去を持っている人物です(ちなみに、ボブは同じ状況のシュミレーションでなんなく狙撃成功・・)。

物語にニックを加えたことにより、ボブを第三者の目線で見れて深みが出てる気がします。 濡れ衣とはいえ、要人暗殺の犯人となっているボブと一緒になってしまった哀れなニック、彼は再びFBIに復帰できるのでしょうか?(w

また、始終怯えている心理学者、ドブラーも最後名脇役として活躍!? 最後は生死不明になりますが、きっとしぶとく生きているのではないかと。

長い戦いを終え、敵を倒した後も舞台を法廷に移してピンチに陥ります。 ちゃんと読んでいた人なら最後の展開は予測できるでしょうけど、まあ、気持ちのよいほどにボブの独り勝ちです(w ここでもニックが哀れでなりません・・・。

スナイパーものというと、ジェイムズ・セイヤーの「地上50m/mの迎撃」も面白かった記憶があります。 この本が楽しめた方ならぜひご一読を。

後日談になりますが・・「ザ・シューター」をレンタルで借りて観てみました。 う~ん(w まあ、ストーリーや設定を変えているところはそんなに気にならないのですが、スワガーが必殺仕置人みたいになっていますね・・・。 白兵戦もするし・・・正義のためなら何をしてもよいと言わんばかりのラストでした。

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軍用スナイパーライフル(狙撃銃)

東京サバイバルゲーム チーム METAL・BEE様のHP(勝手にリンクを貼らせていただきました・・)

極大射程(上巻)

極大射程(下巻)

地上50m/mの迎撃

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2007年4月 4日 (水)

22冊目 緊急の場合は

マイケル・クライトンと言えばジュラシックパークなどが有名ですが、本作「緊急の場合は」は著者が医学生であったころに、授業料を稼ぐために小説を書いていた頃の作品です。 ジャンルで行けば、医学系ハードボイルド?なんてものになるのでしょうか。

「緊急の場合は」マイクル・クライトン ハヤカワ文庫 評価:星3つ ★★★

ちなみに、ハヤカワ文庫ではマイクル・クライトンと表記されています。

序文にも1967年と書いてあり、ハヤカワ文庫からの出版も1993年となっていますのでかなり古い本ですね。 アマゾンでもあまり在庫がない様子。 しかし、今読んでも結構面白かったので今回ご紹介しようかと思った次第です。 当時のアメリカ探偵作家クラブ最優秀賞を受賞してますし。

主人公はベリーという病理医で、顕微鏡を覗いたりして病因などを突き止める、割と地味な感じの部署にいます。 あるとき、友人の産科医が当時のアメリカで禁じられていた中絶を行ってカレン・ランドールという患者を死なせたとして逮捕されますが、友人の無実を信じるベリーは独自に調査を始めます。

友人が密かに中絶を行っていたのは事実であるうえ、死亡したのは資産家で権力を持つ外科医の娘とあって、圧倒的に不利な状況です。 関係者の協力も得られない中、ベリーは友人を救えるのか?

カレンを殺害したのは誰かという問題もありますが、宗教上からも中絶が違法として定められていた時代の話として、現実としては生まれる前から重い障害があることが分かっていたり、暴行の末の妊娠だったりという場合もあり、何が人道的な解決なのかというテーマも取り上げています。

また、医学会の裏舞台や興味を引く専門用語の解説などがちりばめらているほか、人間の二面性、残された家族への迫害なども描かれ、ミステリー以外の部分で考えさせられる部分があり、長編ですが、最後まで楽に読めるのではないでしょうか?

マイケル・クライトン自身が認めているように、欠点は色々あるかもしれません。 例えば、犯人とラストの終わり方がいまひとつなところは否めません。 しかし、25歳の医学生が急いで仕上げたものとは思えない魅力と勢いがあり、かなり昔に読んだのですが、気に入って今でも持っている本の一つです。

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