2008年1月13日 (日)

28冊目 古王国記 サブリエル

古王国記Ⅰ、「サブリエル」 (副題「冥界の扉」、ガース・ニクス著、主婦の友社)をご紹介します。 本の帯には、 「ダークファンタジーの最高傑作」と評されていますが、世界設定や魔力をもったベルを武器として戦うアブホーセンなどのキャラクターがとてもユニークで、出版社がちょっとマイナーなのでなかなか本屋で見つけづらいですが、ファンタジーファンの方にはぜひお薦めしたい一冊です。

「サブリエル」ガース・ニクス著、主婦の友社  

 

 

 評価:星4つ ★★★★

ダークファンタジーとありますし、確かに死霊やらネクロマンサーやら冥界などが出てきますけれど、それほど暗くてじめじめした話でもないと思いますので誰が読んでも楽しめるのではないでしょうか? 評価も星5つに惜しくも届かずといった高評価。

まず、世界設定ですが、アンセルスティエールという20世紀前半のヨーロッパを連想させる通常の世界と、古王国と呼ばれる魔法の世界が巨大な壁を境に存在する形になっています。

壁は強力な魔法の壁で門を通る以外ほとんどの者を阻みます。 また、門はアンセルスティエールの軍隊が防衛しています。 車や電気機器などの近代文明の物は古王国内ではまったくの無力で、すぐに壊れてしまう一方、魔法はアンセルスティエールでは使用できなくなってしまうというちょっとご都合主義な設定です。

古王国は王が不在で摂政が治めていましたが、今では音信不通で中に入って生きて戻ってきた者はいないと言われるようになってしまっています。

そんな中、主人公のサブリエル古王国出身でありながら、アンセルスティエールの学校に通っています。 学校は壁に近いので魔法も多少使うことができるのです。

昼は普通に勉強し、夜は父親から魔法的な手段での連絡を待って魔法を学んでいたが(ネクロノミコンなんてものを読んで勉強しています・・・)、あるとき父親からの連絡が途絶えてしまいます。

最後に受け取った魔法の剣とネクロマンサーのベルを手に、アブホーセンと呼ばれる父親の消息を確かめに死霊がはびこる古王国へと踏み出していく・・・というのが物語の出だしです。

ここでアブホーセンについて説明すると、ネクロマンサーと同等の技を身に着け、ネクロマンサーに対抗し、死霊を冥界に追い返すというとても危険な職業です。

ベルは全部で七つあり、一番目のベルは聴く者を眠りに誘う「ランナ」、二番目は眠りを呼び覚まし死者すら起こす「モスラエル」、三番目は聞く者を操り動かす「キベス」、四番目は声を与え秘密を暴き逆に声を奪うこともする「ダーリム」、5番目は思考を操る「ベルガール」、6番目はアブホーセンがよく使う死霊を縛り付ける「サラネス」、7番目の最終のベルが「アスタラエル」で哀悼のベルと呼ばれ、最も強力で音色を聴く者全て(鳴らした本人も!)を冥界の奥底へ追いやってしまう。

それぞれのベルに癖があり、使い方を誤ると手痛いしっぺ返しがあるのですが、このベルが物語の中で重要な役割を果たしますし、面白い部分です。

さらに、死霊と戦うアブホーセンは冥界にも降りていきます。 冥界は第1層から9層まであり、それぞれの層に違う罠があり、奥へ行くほど危険は増していきます。 ここではベルと死霊の書の知識だけが武器となります。

他にも、チャーター魔術という、古王国で一般的に使われる紋章術のような魔法や、フリーマジックという使用する者の舌を焼き、心を腐らせる闇の魔術も存在して、慣れるまで分かりづらいところがあります。

また、途中でサブリエルと行動を共にするモゲットという喋るネコが皮肉屋で物語にスパイスを与えています。 猫だけに(?)気分屋で謎めいたところもあり、時にはサブリエルにも牙をむいてきます。 本当の正体が明かされるのは古王国記Ⅲ「アブホーセン」まで待たなければなりません。

物語中盤では二百年も昔から石像にされていたタッチストーンと名乗る青年も仲間に加わり、古王国を支配する闇を追い払うために、強大な敵と戦うことになっていくのです。

近代文明世界と魔法の世界を行き来する物語なので「ハリーポッター」を連想するかもしれませんが、読んでみるとそれほど共通点はありません。 壁の付近では魔法の存在も認知されていて、死霊と軍隊の戦闘シーンもあります。 それでいながら、陳腐な内容になっていないところが絶妙なバランスですね。

サブリエルの物語はこの上下2巻で終わり(物語には出てきます)、古王国記Ⅱ「ライラエル」Ⅲ「アブホーセン」ではライラエルという女性が主人公となって活躍します。 ライラエルと行動を共にするのは犬で、これも話すし、見た目通りの存在ではありません。 説教好きですが犬だけに(?)モゲットと違って忠実です・・・。 こちらもファンタジーファンなら見逃せません。

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古王国記Ⅰ「サブリエル」(上巻)

古王国記Ⅰ「サブリエル」(下巻)

古王国記Ⅰ「サブリエル」(ハードカバー)

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2007年6月17日 (日)

25冊目 エレコーゼサーガ「剣のなかの竜」

マイケル・ムアコック永遠の戦士シリーズの核をなす「エレコーゼサーガ」がハヤカワ文庫から復刊されました! 題名は旧巻では2巻目にあたる「黒曜石の中の不死鳥」となっています。 それを記念して(って大袈裟ですが)今回はエレコーゼサーガ最終巻にあたる「剣のなかの竜」を紹介します。

エレコーゼサーガ「剣のなかの竜

 

 

 (*図は旧巻のものです)

評価:星5つ ★★★★★

第1巻「永遠の戦士」、第2巻「黒曜石の中の不死鳥」もいずれ機会があったらご紹介したいと思いますが、個人的に第3巻にあたる「剣のなかの竜」が最も優れた作品だと思っていますし、長編で読みごたえもあるため、こちらの感想を先に書く次第です。 

また、一応「黒曜石の中の不死鳥」の話の続きから始まる形ですが、エレコーゼの話は毎回転生するので、この巻だけでも十分楽しめます(マイケルムアコック初めてという場合は厳しいでしょうけど・・・)。

さて、今回エレコーゼが呼び出される世界は、6つの違う次元をそれぞれ行き来できる世界です。 この世界での英雄であるフラマディンという人物になる訳ですが、今回は単純な英雄物語ではありません。

しばらく経つうちに徐々に明らかになるのですが、フラマディンには双子の妹がおり、実質的には妹のシャラディムが実権を握っており、それに抵抗したフラマディンは永遠に国外追放されたお尋ね者なのです。 

英雄として常に戦ってきたエレコーゼとしては意外な展開で、この後登場するエルミザードそっくりのヒロイン、アリサードともいまいちうまくいきません。 英雄の介添人役のフォン・ベックアリサードの仲に嫉妬するところまで墜ちてしまいます(w

混沌の手を借りて世界を征服しようとするシャラディム姫エレコーゼ達は対抗できるのでしょうか?

ラストも今までの永遠の戦士の物語とは違った終わりを迎えます。 なぜなら、この作品は「ブラス上年代記」の第3巻で永遠の戦士シリーズが一応の終わりを迎えた後に書かれた物語で、ムアコック自身の考え方も以前の人間に否定的なものから、英雄への懐疑、人間の再評価というものに変わってきているからです。

物語の後半で、英雄という役目に縛られ、潰されそうになったエレコーゼに対して、フォン・ベックが言います。 「あんたの身に起きたことを変えることはできまい。だが、あんたが何になったかは変えることができる ~ あんたは、自分がなったものを、変えることができるんだ!」 この言葉が今回の重要なテーマになっていて、この選択を誤れば悲惨な運命が待っていたかもしれません。

他にも結構名言があって、「人間一番腹を立てるのは、物事を自分に都合よく誤認していたことに気づいたときだというが、まことにもってそのとおりだな!」など、諧謔(かいぎゃく)精神にあふれる台詞も楽しみの一つです。

今までのエターナルチャンピオンシリーズとは違うコンセプトとはいっても、いつもの法と混沌と天秤という話は変わらないですし、セピリズ曲がりのジャーメイスといったお馴染のキャラクターも出てきます。

他にも、6つの世界が舞台のため、人間のほかに食人の習慣があるという「亡霊女」や、太古から存在する(なんと、宇宙のサイクルを4サイクルも経験した)「熊の王族」など、様々な種族が登場するほか、混沌の中心でも歪曲されず、法の存在であることを貫き通すユニコーンや、聖杯、最後の戦いのためだけに生き続ける「時の果ての戦士」なども出てきます。

また、最後は混沌の大公爵、バラリザーフとの壮絶な戦いも描かれ、エルリックサーガに繋がる物語として、「王の指輪」「ストームブリンガー」「モーンブレイド」がどのようにして生まれたのか、メルニボネの祖先がどのような人々だったのかを暗示させる部分もあり、ファンとして見逃せないストーリーとなっています。

ラストは、友人の誘いを断って、あれが正しい選択なんだろうな・・・とは思うものの、どことなく寂しい感じですね。 でも、ついていっても、あの後メルニボネに続くのか・・と思うと微妙ですが(w  ジョン・デイカーとはムアコックの分身みたいなものなんでしょうか。

追記

書店に行ったら、もう新刊版がでていました。ちらっと見た感じでは、内容は手を加えてない感じです。 旧版を持っていない方はお薦めです。

まだアマゾンの検索では新刊が出ていないみたいですが、ハヤカワオンラインで購入できます。>>新刊版のアマゾンへのリンクを追加しました。

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3冊目 エルリックサーガ 「メルニボネの皇子」

11冊目 ストームブリンガー

13冊目 紅衣の公子コルム

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剣のなかの竜(新版)

剣のなかの竜(旧版)

黒曜石のなかの不死鳥

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2007年4月22日 (日)

23冊目 アークエンジェル・プロトコル

過去のお薦め本紹介からちょっと離れて、積読となっていた本を消化。 「アークエンジェル・プロトコル」という本です。 ライダ・モアハウスって著者も初めて見ました。

アークエンジェル・プロトコル ライダ・モアハウス著 ハヤカワ文庫

 

 

 

評価:星3つ ★★★

ジャンルは迷いましたが、SF扱いにしました。 でも、アメリカ私立探偵クラブ賞受賞しています。 まあ、SFとハードボイルドとファンタジーを詰め込んだ本と言ったほうが分かりやすいかもしれません。

評価も、始めは星3つをつけようかと思ってました・・・いきなり「リンク天使」とか「メデューサ爆弾」とかでてきて、さらにSF慣れしていない自分には世界観になじむのに時間がかかったからです。 でも、慣れてくると結構面白かったり・・・2作目まで読みたいかというと微妙ですが、この本自体は中盤からラストまでは一気に読んでしまいました。

世界観は、「甲殻機動隊」(士郎正宗著)の電脳化された世界とレイン」(serial experiments lain)での概念、リアルワールドワイヤードなどを連想させます。 それにミカエルをはじめ四大天使、モーニングスター(明けの明星)など宗教やファンタジーの世界もミックスされています。 あ、主人公は女刑事で凄腕ハッカーってのもなんとなく何かに似てますね・・・(w

舞台は2075年くらい?で、アメリカです。 しかし、人類の科学と戦争が「メデューサ爆弾」という恐ろしい兵器を生み出し大きな被害が出たこともあり、宗教が政治や生活を支配する世界になっています。

一方、人々はこめかみに端末を埋め込んで、直接ネットに繋がる「電脳」が普及。 ネットにつなげない貧困層や犯罪などではずされた人はその恩恵に与れません。

そんな中、リンク(ネット)の中に「天使」が光臨するという事件が起き、人々に直接イメージや感情を与える通常不可能な奇跡を起こし、ほとんどの人が本物の天使だと信じるようになります。 それがネット上に現れる神の使い、「リンク天使」と呼ばれる存在です。

やっと、あらすじですが(w 主人公のディードリはネット上の犯罪を取り締まる女捜査官でしたが、同僚の起こした事件に巻き込まれる形で解雇され、宗教上も破門となり、リンクもできなくなります。

しがない私立探偵となった彼女ですが、ある日「リンク天使」は偽者の天使なので正体を暴いて欲しいと依頼を受けます。 それがきっかけで本物の天使やら天才ハッカー「マウス」、現政府へのレジスタンスなどを交えた壮大な物語が始まるのです。

上でも述べたとおり、SFとハードボイルドと宗教(ファンタジー?)を混ぜたようなこの作品、でも決してハチャメチャなストーリーになっているわけではありません。 ハードボイルドを物語の格子に据え、世界観はSF、概念は宗教と見事に融合しているんじゃないかと思います。

オーソドックスな話に食傷気味な方、興味を持った方は一読されることをお薦めします。

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2007年3月 8日 (木)

20冊目 呪われし者の女王

アン・ライスヴァンパイア・クロニクルシリーズの3作目、「呪われし者の女王」を今回はご紹介したいと思います。 前作「ヴァンパイア・レスタト」の最後、ロックコンサートの騒動の後にアカシャにさらわれたレスタトがどうなるのか、その続きと結末が本作で語られます。

呪われし者の女王

 

 

 

評価:星4つ ★★★★ 

呪われし者の女王とは、前作でヴァンパイア・マリウスが古代から護ってきた、全てのヴァンパイアの始祖であり、動かぬ彫像として安置されていたアカシャのことです。 

古代エジプトの時代からヴァンパイアとして蓄えた力は想像を絶するものがあり、世界中の人間の思念を受信し、天敵である太陽すら表面を焦がすにすぎません。 超高速で空を飛べる上、前作の最後でも使われましたが、念じるだけで人間やヴァンパイアを殺せるほどの力を持っています。

今まで石像のようにほとんど動かなかった彼女がレスタトに刺激され目覚めるわけですが、なぜ各地のヴァンパイアを襲ったのか、そしてレスタトをさらって何をしようとしているのか? アカシャの恐るべき野望も後半で明らかになっていきます。

上巻の前半は時間を巻き戻って、前作の最後、レスタトのコンサートに至るまでの他のヴァンパイアや人間の様子が語られます。 

アカシャの目覚めに直面したマリウスの危機とヴァンパイア達の王であったエンキルの最期。 それを助けに向かうパンドラサンティーノ。 この辺りで登場するヴァンパイアたちは前作では存在すら疑われていた伝説のヴァンパイアです。

ヴァンパイア・アルマンと元記者のダニエル(インタビューウィズヴァンパイアでヴァンパイア・ルイにインタビューした人物です)の物語。 若いヴァンパイア達がアカシャに襲われる様子。 世界中の超常現象を調査している団体、「タラマスカ」の女性調査員ジェシーの一族に関する謎。

それらの中で繰り返し現れる夢が「双子の夢」です。 それが何を意味するのか? 謎を置いたまま物語は先に進みます。

後半になると、レスタトアカシャの話と、「最初の血」と呼ばれるアカシャと並ぶ最古老のヴァンパイアの元に生き残りの他のヴァンパイアが集まり、「最初の血」、マハレが語るヴァンパイアの歴史の真実と悲劇の話が交互に繰り返されます。

そしてクライマックス、アカシャの野望を止めることができるのか? 始祖であるアカシャを傷つけたり、殺したりすれば、他の全てのヴァンパイア達にもはね返るという現実にどう対処するのか?

今回は前半(特にアルマンとダニエルの話)が長くて同性愛っぽい雰囲気だったのと、アカシャの力が強力すぎて現実離れしていたことなどもあって、前作星5つに対して4つと評価しました。

また、男性がいなければ、戦争や殺人は起こらなくなるなど、ちょっとそれは違うのでは?というテーマに対して、登場人物たちも乱暴な意見であるとしながらも半ば認めているところが違和感を覚えました・・・。 なぜって、アカシャ本人が王女として戦争と虐殺を行っていることですでに自己矛盾してるし(w

あとがきを読んで知りましたが、著者のアン・ライスは愛娘を亡くし、アルコール依存症になったところから、乗り越えて作家人生を歩んでいるそうです。 

「世の中には人の力ではどうすることもできない暗黒があり、いったんそれに捉えられてしまうと、それはそう簡単には人生から去ってはくれない。 けれど、人はやがて暗黒のなかでどうやって光を見出せばいいかを学ぶようになる。 そうなったとき、その人は光しか知らない他の人々の知ることのできない真実を理解できるようになるのだ。」とインタビューで答えているそうです。 確かにそのようなテーマがこの作品から読み取れるように感じました。

ヴァンパイア・クロニクルシリーズで始めに読んだのは、5作目の「悪魔メムノック」なのですが、まだ紹介できるのは先ですね・・・。 

そういえば、この「呪われし者の女王」は映画化されているのです。 「クイーン オブ ザ ヴァンパイア」という作品ですが、日本ではあまり話題になってませんよね? なんとなくDVD買っていたりするので、いずれDVDの紹介も書こうかと思ってます。

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14冊目 ヴァンパイア・レスタト

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呪われし者の女王(上)

呪われし者の女王(下)

DVD クイーンオブザヴァンパイア

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2007年1月28日 (日)

17冊目 真実の剣シリーズ「魔教の黙示」4

真実の剣シリーズ「魔教の黙示」の4巻目-希望の消えた町-(テリーグッドカインド)を最近読み終わりましたので、感想などを・・・。

評価:星4つ ★★★★ (なんかアマゾンに変わって画像が小さくなりましたね・・)

「魔教の黙示」の1巻でようやく回復したカーランでしたが、闇の信徒で「死の女主人」と呼ばれているニッキに呪文をかけられ、カーランの生殺与奪はニッキに握られてしまいます。 そのニッキリチャードを脅迫して言ったことが、自分を妻として魔法は一切使わずに守ること・・・。

何を考えているのか分からないニッキに連れられ、二人は旧世界を旅し、ようやくジャガンの故郷へたどり着きます。

ここからが4巻の話になる訳ですが、話として本筋と違う、しかもダーラの王にまでなったリチャードが惨めに農民出身として暮らしていく陰鬱な話しかと思って読んでいたのですが、意外なことに至高秩序団の綻びが見えてきて、絶体絶命(毎回のことですが・・)の新世界を救える一筋の光が見えてきた感じです。

しかし、至高秩序団のやり方・・・すべての人が公平に、働く人もそうでない人も・・・って、社会主義の悪い部分を取り出しているんでしょうか? ニッキリチャードはその弊害を目の当たりにします。

ニッキにしてみれば、リチャードに至高秩序団の素晴らしさを知って欲しかったのでしょうが、現実は厳しく、住民の暮らしは貧困と怠惰にまみれています。 せっかく作られた材料・原料なども公平という概念で必要なところに分配されにくくなっています。 なんか、崩壊前のソ連で食料が足りない人がいる一方で、大量のジャガイモなどが供給されないまま腐るに任されている現場のテレビの報道を思い出してしまいました。

そんな中、リチャードは逆境にめげずに周りを改善していきます。 自分の求めるものではなく、相手の求めるもので交渉していくことが大事ということでしょうか。 2・3巻ではカーラン側での戦争のシーンに光が当てられ、リチャードの話は退屈なものでしたが、今回は割りと読ませるものになっています。

建設中のジャガンの宮殿に隠された秘密があることも分かり、魔道士(ウイザード)と別に、呪術士(ソーサラー)が存在するということも語られます。

巻の最後ではまたリチャードがピンチに! ニッキの恋はどうなってしまうのか!(笑

次回も楽しみです。

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10冊目 魔道士の掟

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2006年12月17日 (日)

14冊目 ヴァンパイア・レスタト

ゴシック小説の女王アン・ライス著の「ヴァンパイア・レスタト」を紹介します。 これほどまでにヴァンパイアを丁寧に、そして魅力的に!描いた作品は他に見たことがありません。

Photo_1

 

 

評価:星5つ ★★★★★

ヴァンパイア・レスタト」はヴァンパイアクロニクルシリーズの一つで、前作にあたる「夜明けのヴァンパイア」の続編ですが、こちらから読んだほうがいいかも。 「夜明けのヴァンパイア」は映画化された「インタビューウィズヴァンパイア」の名前のほうが有名かもしれません。

インタビューウィズヴァンパイア」を始めて見たときは、まだ原作を読んでいなかったので、特に面白くもない映画・・という印象でした。 しかし、原作を読んでから見ると、トムクルーズの演技といい、原作の魅力がとてもうまく表現されていることに気づきます。 ぜひ、原作を読んでから映画を見ることをお薦めします。

わき道にそれましたが、「ヴァンパイア・レスタト」では、「夜明けのヴァンパイア」で貶められていたレスタトが主人公というか、レスタト自身が書いたという設定で、現代の世界に久しぶりに目覚めたレスタトがロックバンド(!)でスターを目指そうとするところから始まります。

このあらすじだけ読むと一見ライトノベルのような軽い話かと思うかもしれません。 ところが、ストーリーは重厚で色々な思想が語られ、見る間にレスタトの究極のヴァンパイアへ続く壮大な冒険に引き込まれてしまうことでしょう。 少し男性同士の愛みたいな雰囲気もありますが・・・・まあ、人間じゃないし。

物語はレスタトがまだ人間の頃、落ちぶれた地方の領主の放蕩息子だったレスタトがどのようにしてヴァンパイアとなったのか、そしてヴァンパイアはどのようなものなのか、「闇の賜物」、「悪魔の道」について語られます。

意に反してヴァンパイアとなったレスタトがヴァンパイアの起源を求めて、何百年と生きているヴァンパイアの間でも伝説となっている歳を経たヴァンパイアたちを探したこと、そこで全てのヴァンパイアの始祖である「護られるべき者」を見たこと。

レスタトはその冒険の過程でとてつもない力を持つヴァンパイアとなりますが、その後前作である「夜明けのヴァンパイア」からの一連の出来事で失意とともに永い眠りへとつきます。

そして本作の冒頭の部分へ話が戻ってきます。 なぜロックスターを目指すのか。 闇の生物として今まで人間に知られることなく生きてきたヴァンパイア全ての謎を人間たちに明かし、自らがテレビカメラの前に出る行為は、他の全てのヴァンパイアに対する挑戦でもあり、また、人間に対しても宣戦布告をしていると言えます。 いずれにしても、レスタトは無鉄砲で限界を知らない強烈な生き方をします。

この無鉄砲さで好き嫌いが分かれるかもしれません。 でも、いつの時代も閉塞した古い世界を破壊して停滞から新たな時代を生み出すのは、レスタトのような熱い情熱と不屈の精神ではないでしょうか?

その顛末はどうなるのでしょうか? そして第2部「呪われし者の女王」へと話は受け継がれます。 ダークファンタジー系が好きな人にはかなりお薦めします。 久々に読み直しましたが、一気に読んでしまいました(w

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20冊目 呪われし者の女王

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「ヴァンパイア・レスタト」上

「ヴァンパイア・レスタト」下

第2部「呪われし者の女王」もお薦め!

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2006年12月10日 (日)

13冊目 紅衣の公子コルム

マイケル・ムアコック著のエターナルチャンピオンシリーズの一つ、「紅衣の公子コルム」、今回はその第1部である「剣の騎士」、「剣の女王」、「剣の王」の3冊を紹介します。

Photo

 

 

評価:星5つ ★★★★★

(絵柄的に3巻目が良かったので「剣の王」を張りました・・。)

コルムの物語は第1部と第2部ではまったく違った話となっています。 第2部では違う時代に召還され、そこでの冒険となるのです。 第2部までの全6巻を見ればコルムは、四英雄(エルリック、エレコーゼ、ホークムーン、コルム)の中で最も悲惨な結末を迎えるヒーローです(w エルリックより酷い最期だなーと個人的に思うのですが、どうでしょう?

前半でコルムは、「コルム・ジャエレン・イルゼイ」と呼ばれ、後半では「コルム・ルロウ・エレイント」と呼ばれます(意味は本を読んでください・・)。

とはいえ、第1部はめずらしく(?)ハッピーエンドを迎えます。 第1部は、コルムの生まれた世界の話。 ヴァドハーというエルフのような種族に生まれたコルムですが、ヴァドハーを怨むマブデン(人間のこと)たちが出現し、家族を含めコルム以外の一族は虐殺されてしまいます。

コルム自身も敵の拷問を受け片眼と片腕を失います・・・(うーん、やっぱり悲惨だな・・)。  辛くも生きながらえたコルムは味方に出会ったり、再び一族の仇と戦ったりしながら古代の魔術師の島で神々の体の一部、「クゥイルの手」と「リンの眼」を生体移植されます。 これらが3部作でコルムの超自然の武器となります。

リンの眼」は地獄の奥底「リンボ界」を覗き見、「クゥイルの手」は「リンボ界」にいる死人を呼び寄せ従わせます。 言わば召還術なのですが、呼び出す者たちは直近で殺した敵というのが珍しいというか、呪わしい設定ですね・・。

このような武器と旅で仲間になるものたちとコルムは戦っていくのですが、マブデンたちの背後で糸を引いていたのは、混沌の神々であったことが分かるのです。

第1巻では地獄の大公アリオッチ、第2巻ではキシオムバーグ、第3巻ではマベロードと、強大な神々を敵に回して戦うこの3部作は結構好きです。 最後もハッピーエンドを迎えるし・・・(ハッピーエンドは納得いかないという人もいるのかもしれませんが・・)

1巻のアリオッチとの戦いも単純に戦闘するのではなく、幾重にも張られた罠と偽りで絶体絶命の危機に陥ったりと、ストーリーがよく練られていて、全体的にエルリックサーガエレコーゼサーガなどよりまとまりのある物語に仕上がっています。 中盤でのシュール・アン・ジヴァンという妖術師とのやりとりも面白いですね。

また、1巻の序章で物語の導入が語られますが、ここの表現はかなり気に入っています。 しかるに<人間>は、不安の奴隷でありながら、無知ゆえに傲慢な態度で、よろよろと前進を続けた。あきらかにちっぽけな己の野心がひき起こした巨大な崩壊が見えなかったのだ~<人間>を創造することにより、宇宙は古い種の生物たちを裏切ってしまった。」 ムアコックはこの時期とても人間嫌いな時期だったんでしょうか?

第2巻「剣の女王」では、ジャリー・ア・コネルという、英雄の介添人が登場し、コルムが永遠の戦士の一人であることを告げます。 そして混沌に仕えるマブデンと混沌の神キシオムバーグの援軍が攻めてくることが判明するのです。 まったく勝ち目のない戦いを前に、強力な同盟者がいることを知りますが、同盟者はキシオムバーグが支配する次元にいるという。 コルムたちは同盟者と見つけることができるのでしょうか?  あ、忘れるところでした、呪われし運命のゲイナーも登場します。 記憶が定かではないですが、薔薇の復讐にもでてきましたよね・・? 混沌に服従させられている元永遠の戦士です。

第3巻では、前回平和が戻ったように見えたのもつかの間、コルムの宿敵であるグランディスが混沌の神マベロードの助力を得て攻撃を仕掛けてきます。 なんとか逃げ切ったものの、妻であるラリーナとはぐれ、他の次元を彷徨うことになるのです。 ここでエルリック・エレコーゼなど他の永遠の戦士と運命が重なり合ったり、永遠の都市タネローンを求めたりしながら、混沌を倒す方法を探します。 ここで物語りはいったん終わりますので、クウィルの手やリンの眼の謎なども全て明かされ、一応の大団円を迎えます。

今ではなかなか本を手に入れにくい状況ですが、マイケル・ムアコックの作品が気に入った人ならば、古本屋で探してでも読む価値のある作品です! ホークムーンが新版で出てるのだから、コルムシリーズもぜひ出して欲しいですね~。

(追記) あれから月日も流れ・・・ついにコルムシリーズも書店にならびましたね! 今は「雄牛と槍」の題名で後半の三部作が1冊になって出ています。 後半はまったく異なる話になりますが、自分的には四英雄中で最も悲惨な結末と言えるコルムの物語、ぜひ読んでみてください(w

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3冊目 エルリックサーガ 「メルニボネの皇子」

11冊目 ストームブリンガー

25冊目 エレコーゼサーガ「剣の中の竜」

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剣の騎士(新版、旧版の1~3巻に相当)

雄牛と槍(新版、旧版の4~6巻に相当)

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2006年11月12日 (日)

11冊目 ストームブリンガー

エルリックサーガ第6巻(新版では4巻)にあたる本作(マイケル・ムアコック著)は、最終話が収められています。 「メルニボネの皇子」でまだエルリックサーガを語り足りなかったので新設しました(w

評価:星5つ ★★★★★

エルリックサーガ最終章に相応しい、壮大なストーリーとなっています。 

5巻「黒き剣の呪い」でザロジニアを妻として娶り、辺境の王国カーラークにようやく愛と平安を手に入れたエルリック。 呪われた剣、ストームブリンガーを最後海へ捨てたのですが、剣はひとりでにカーラークの武器庫に戻ってきています。

物語の冒頭で、混沌の手先がエルリックの元へ送り込まれ、最愛の妻ザロジニアが誘拐されてしまいます。 黒魔術で敵の死体から情報を得たエルリックは、再び武器庫に保管されている魔剣ストームブリンガーを手に取り、戦いへと乗り出していきます。

今までよりかなりの強敵がつぎつぎ現れます。 なにせ、神々と戦うんですから・・。 そして、エルリックの宿敵となるパン・タンの神官ジャグリーン・ラーンもなかなかの強敵です。 混沌の神々から恩恵を受けているので、ストームブリンガーの恐るべき攻撃もかわしてしまうのです。

混沌が勢力を伸ばす中、エルリックを助けるのが、セピリズが代表する「十者」と呼ばれる「運命(フェイト)」に仕える者たちで、助言を与え、1巻から姿を消していたストームブリンガーの片割れの魔剣、モーンブレイドを授けます。

モーンブレイドはエルリックの同胞、ディビム・スロームが持つのですが、この2本の剣は凄まじい力を発揮します。 そして、ストームブリンガーの秘密が語られ、この剣の無数の兄弟たちに助けを呼ぶ呪文も伝えられるのです。 さらに後半、混沌の盾という、究極の盾も手に入れます。片手にストームブリンガー、もう片手に混沌の盾を装備してまさに無敵状態に(w

ジャグリーン・ラーンが呼び出した地獄の公爵たちの圧倒的な力にエルリックは立ち向かえるのでしょうか? 公爵の中には、メルニボネ人が崇めてきた、今までエルリックの守護魔人であったアリオッチすら含まれるのです!

混沌の影響で大地はうねり、変化の波に飲まれると人も物も永久に姿かたちを歪められてしまい、まさに世界の終末のようになっていきます。 最愛の妻ザロジニアを一度は取り戻すものの、その後あまりに悲惨な運命が待っています。 結局、エルリックら永遠の戦士にとって休息は一時のものなんでしょうね・・・ザロジニアは、恋敵であるストームブリンガーに負けたとも言えるかも・・。

登場人物も満足できるものがあります。 親友、ムーングラムはもちろん、赤き射手ラッキール、竜洞の支配者ディビム・スロームがともに戦い、終盤では竜や法の神々も登場します。 ラストに相応しい豪華キャストですね。

ラストは当然ハッピーエンドではありません(w しかし、バッドエンドとも言えない・・・ある意味では勝利とも呼べるかもしれません。 でも、エルリックサーガのファンであれば納得できるのではないでしょうか? 古い時代から新しい時代へ、混沌と法のバランス・・・ストームブリンガーの真の姿は謎のままです(エレコーゼサーガ第3巻「剣の中の竜」で少し語られます)。

「ストームブリンガー」での基本思想は、今でこそありふれたものかもしれませんが、法(ロー)と混沌(カオス)の均衡です。 「法」は秩序をもたらしますが、同時に停滞を招きます。「混沌」は変化と無限の可能性を与えますが、混乱や無秩序をもたらします。 両者がバランスよく釣り合ってこそ(ある程度法の側に偏って)、世界がうまく成り立つ。

また、宇宙は基本的に不公平なもので、人間はその中で自ら秩序を打ち立てていかなければならない。 平和は与えられるものではない。 そんなメッセージが込められているように感じます。 本書を最後まで読んだ人ならば、もしかすると、今の世界があるのはエルリック達の尊い犠牲のおかげかもしれないと感じるでしょう(あくまでお話と割り切ればそれまでですけど・・)。

個人的に、ラストの壮大な戦いに合う曲として、ショスタコービッチの交響曲第5番ニ短調作品47「革命」第4楽章を聞きながら読んでみたりしてます。 壮大でありながらどこか悲壮な感じの曲がストーリにマッチしてると思うのですが・・・・将来映画化されることがあれば、使ってほしいです(w

ここで、今販売されている新版の方ですが・・・。カバー絵が天野喜孝でないのはしょうがないとして、なんでしょう?物語の順番がちょっと変な気が・・旧版の初めのほうに出てきたショートストーリーの冒険が突如でてきて、旧版に慣れた私はちょっと・・・。 そして!これが一番感じましたが、「アリオッホ」ってなんですか?なんかすごくかっこ悪いんですけど・・・地獄の大公は「アリオッチ」でしょうが!と言いたい・・・せめて、「アリオク」程度にでもしてくれれば・・・。

最後に、ある意味エルリックより有名となった魔剣ストームブリンガーについての描写をすこし書きます。

黒い大剣からやわらかな呻きが発せられた。それは重く、完璧なバランスを保った、両手使いの長大な広刃の剣で、柄は横に長く、刃はなめらかに幅広く、柄から切っ先までは5フィート以上もあった。柄近くには神秘のルーン文字が刻まれ、エルリックでさえ、その意味が完全にわかるとは言えなかった。」 こんな剣だそうです。 6巻の最初に、天野喜孝のカラーの挿絵に描かれている剣こそ、私のイメージしているストームブリンガーです。

またも、お前を使わなねばならぬか、ストームブリンガー」 エルリックは続けて言います。 「いまこそ、われらは、死以外に分かつものがないほどの絆で結ばれている、と言わねばなるまい」 と。

強大な力を持ち、使い手に魔界の活力を与えるものの、時には使い手の意思に反して人を殺す剣。 敗戦後、一緒に戦った仲間がいつのまにか見当たらなくてエルリックは聞きます。 「「気がつかなかったのか?」 「気がつく、何に?」 「ジャグリーン・ラーンの旗艦に乗りうつって、おぬしが主甲板へ行こうと切りまくっていたときだ。そのときのことさ、おぬし、自分のやったこと ― というか、おぬしの呪われた剣のやったことを知らんのか」 エルリックの全身にどっと疲労がこみ上げた。 「いや。わたしは ― わたしの剣は ― かれを殺したのか?」

半ば憎しみながらも持ち続けなければならない魔剣。 敵に対する容赦ない復讐と失っていく友情・愛情・・そんな陰鬱なところもなぜか惹きつけられる作品なんですよね・・。

読んでいない方は、ぜひ1巻、「メルニボネの皇子」から読んでみてください。

あと、エルリックサーガに登場する人物の辞典をHPに作っている方がいました。 かなりマニアックです(w こちら、そろりんさんのHPへのリンク ブログもあるようです。

関連リンク(ブログ内)

25冊目 エレコーゼサーガ「剣の中の竜」

13冊目 紅衣の公子コルム

3冊目 エルリックサーガ 「メルニボネの皇子」

サイト内のご案内

関連リンク(外)

エルリックサーガ人名事典

こちら、第3巻

さらに、第2巻

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2006年11月 9日 (木)

10冊目 魔道士の掟

真実の剣シリーズの第一編「魔道士の掟」テリー・グッドカインド著 を紹介します。 最新刊は今年10月発売の「魔教の黙示 3 戦争と結婚」で、すでに29巻くらいでています。

評価:星4つ ★★★★

星4つという評価は作品全体に対してです。「魔道士の掟」(文庫全5巻)への評価は星5つにしてもいいかな、と思っています。 ロバート・ジョーダン著の「時の車輪」シリーズと並んで世界中で売れている本格ファンタジー小説です。

ストーリーは、森の案内人であった主人公リチャードが、偶然ひとりの女性を救ったことから全世界を恐怖で支配しようとしているダークン・ラールを倒す使命を負う事になっていくというファンタジーではお馴染の展開ですが、色々な意味で個性的な物語となっています。

剣と魔法のお馴染の展開も独特の味付けがなされ、面白いのですが何より、そこに描かれる人間の生き方、考え方が強烈に描かれているのです。

たとえば、リチャードは突然「探求者」という称号を与えられますが、探求者は真実のみを追い求め、独力で勝利を得なければなりません。かつて、探求者の発したたった一つの質問で一国の王が震え上がったとさえ言われるほどの力をもつ存在なのです。

リチャードもそんな探求者としての素質の片鱗を1巻から示していくのですが、確かに読んでいてハッとさせられる見事な質問を投げかけています。言葉が剣や魔法より力を持つ瞬間・・。現実の世界でも、質問の仕方ひとつで状況が変わることってありますよね。 特に4巻でのリチャードが老魔道士に発した質問には感心させられました・・・日常でも使えそうですね・・。

そしてもうひとつ、この編の題名でもある「魔道士の掟」ってやつです。 4巻で最初の「魔道士の掟、その1」が登場します。(本を読む前に見たくない方もいるでしょうから、伏せておきます。読みたい人は「」の間をドラッグして反転させてください。) それは、「人は愚かなものであると心得よ」というものです。

これだけではいまいち意味が分かりませんが、「人は愚かなものであり、それを信じたいがゆえに、あるいはそれが真実であることを恐れるがゆえに、嘘を信じてしまう」という意味だそうです。これはとても深い言葉ですし、この掟を応用することにより人々を都合のいいように操ってしまうことすらできてしまいます。 これは物語の世界だけの話ではなく、現実の世界でも往々にしてあることなので、考えさせられました。

ファンタジーは寓話として、現実世界へのメッセージや教訓を分かりやすく伝えてくれますが、この作品も色々な面で作者の伝えたいメッセージがこめられているのです。

最新刊である「魔教の黙示 3 戦争と結婚」ではついに掟その6が登場しました。うーん、この頃になるとリチャードの立場もずいぶん変わっていて、魔道士の掟なんて半分忘れてました・・・掟その5とか4など記憶に残ってないので、一覧表でも作って欲しいくらいです(w

さらに、このシリーズの魅力というか、特徴ですが、いつも主人公が絶体絶命で勝つことが不可能な状況に追い込まれ、みごと(もしくは辛くも)逆境から抜け出すストーリーとなっていることです。

生半可な危機ではなくて、本当に絶望とも言える設定です・・・毎回・・・著者は相当のSだなあ・・・と読まれた人は思うはず(w 魔法の世界なので予言も度々出てきて重要な役割を果たしますが、その内容も最も信頼している仲間(時にはヒロインから!)裏切られて致命的な攻撃を受けるように予言されることもあったりします。 

まあ、そこは物語が進むと予言の本当の意味が明らかになるのですが、まったく毎回よくこんな逆転不可能な立場に追い込むなあ・・と。主人公とヒロインは美男美女で類まれなる能力をもっていますが、ちっとも羨ましくないです(w

剣と魔法と作者の強い思いが込められたこのシリーズ、ぜひお薦めします! (今回久しぶりに5冊全部読み返したので、感想書くのに時間かかってしまった・・・)

関連リンク(ブログ内) 

17冊目 真実の剣シリーズ「魔教の黙示」4

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真実の剣シリーズ~魔道士の掟~

第1巻 探求者の誓い

 魔法とは無縁に暮らしていたリチャードと魔法の国から来たカーランとの運命的な出会い。彼女の使命はダークン・ラールの野望を命に代えても阻止すること。その絶望的な使命が果たされなければ、全人類はダークン・ラールの奴隷になってしまうとういう!

第2巻 魔法の地へ

 魔道士から探求者に任命されたリチャードは、ヒロインであるカーランと共に死者の世界に通じる魔法の境を通り抜けなければならない!彼らは境を越え、ミッドランズへたどり着くことができるのか?

第3巻 裏切りの予言

 ミッドランズの辺境に住む排他的な部族、泥の民。情報を得るために、リチャードは彼らから信頼を勝ち得なければならない!それは、順調に進んだかに見えたが、ひと波乱起きます。そして、魔女より恐ろしい予言がもたらされます。

第4巻 結ばれぬ宿命

 ついに、カーランの正体と聴罪師長という称号の意味が明かされる。それは、彼女とは絶対に結ばれぬ運命を意味していた・・・。ダークン・ラールが求める魔法の箱を隠してきた魔道士ギラーの最期の賭けとは?そして、すべてがうまくいったかに思えたとき、リチャードは人格を変えられるほどの絶体絶命の窮地に追い込まれる!

第5巻 白く輝く剣

 ついに魔道士の掟編のクライマックス!ダークン・ラールに捕われたリチャードの運命は?魔女ショータの恐るべき予言がついに現実のものとなり、全ての望みはなくなったかに見えたが・・・。

最新刊 魔教の黙示 戦争と花嫁

 シリーズ最新作です。

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2006年10月24日 (火)

8冊目 夏への扉

今回はSFものです。ロバート・A・ハイライン著の「夏への扉」を久々に読み返してみました。有名な作品なので読んでいる方も多いと思います。

評価:星4つ ★★★★

SFと言っても、誰が読んでも楽しめると思います。1960年代に書かれたものなのに、今読んでもかなり面白い。星が4つなのは、5つ星を増やしすぎてもいけないと思って、かなり辛目に評価した結果です。猫好きだったら間違いなく最高評価になるでしょう。

最愛の恋人と親友に裏切られ、発明品まで奪われて人生に絶望してしまった主人公。大事にしている飼い猫のピートとともに、冷凍睡眠(コールドスリープ)を申し込む決意をする・・・30年後、西暦2000年まで。30年後の世界はどうなっているのか?そして、乗っ取られた会社は取り戻せるのか?

1960年代に書かれたので、1970年にすでに冷凍睡眠の技術があることになっています(まだかなり危険性があるようですが)。自動窓拭器や文化女中器(ハイヤード・ガール:自動真空掃除機)なんてものも主人公がすでにある技術を利用して開発しているので、現実の1970年代とはかなり違っています・・・冷戦が悪化して戦争もあったみたいだし。

そしてその30年後、2000年の世界はまさに昔考えられていた未来の世界像です。人々の暮らし自体はそれほど変わっていないけれど、月や火星に旅行もいけるし、人工合成肉とか、召使ロボットや、研究段階ですがタイムマシーンもでてきます。

それと比べると、今は1960年代に考えられていたより進歩してないですねー。まあ、インターネットや携帯電話などはかなり発達していますけど。 2001年には木星に行き、2003年にはドラえもんが誕生するはずでしたからねえ(w

この物語、主人公の時間を越えた冒険も楽しいのですが、飼い猫のピートに対する愛情(猫も活躍します!)たっぷりに描かれています。タイトルの「夏への扉」も、冬の寒いときに猫のピートが、家の扉のどれかが暖かい夏へと続く扉なんだと信じて、納得するまで家中の扉を順番に開けさせる・・・というエピソードからつけられています。

さて、主人公は「夏への扉」を探し当てることができるでしょうか?アクシデントで生き別れた猫のピートの運命は?

晴れた夏の日のような、さわやかな読後感。SFですが、誰でも楽しめるお薦めの本です。

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