2007年4月 4日 (水)

22冊目 緊急の場合は

マイケル・クライトンと言えばジュラシックパークなどが有名ですが、本作「緊急の場合は」は著者が医学生であったころに、授業料を稼ぐために小説を書いていた頃の作品です。 ジャンルで行けば、医学系ハードボイルド?なんてものになるのでしょうか。

「緊急の場合は」マイクル・クライトン ハヤカワ文庫 評価:星3つ ★★★

ちなみに、ハヤカワ文庫ではマイクル・クライトンと表記されています。

序文にも1967年と書いてあり、ハヤカワ文庫からの出版も1993年となっていますのでかなり古い本ですね。 アマゾンでもあまり在庫がない様子。 しかし、今読んでも結構面白かったので今回ご紹介しようかと思った次第です。 当時のアメリカ探偵作家クラブ最優秀賞を受賞してますし。

主人公はベリーという病理医で、顕微鏡を覗いたりして病因などを突き止める、割と地味な感じの部署にいます。 あるとき、友人の産科医が当時のアメリカで禁じられていた中絶を行ってカレン・ランドールという患者を死なせたとして逮捕されますが、友人の無実を信じるベリーは独自に調査を始めます。

友人が密かに中絶を行っていたのは事実であるうえ、死亡したのは資産家で権力を持つ外科医の娘とあって、圧倒的に不利な状況です。 関係者の協力も得られない中、ベリーは友人を救えるのか?

カレンを殺害したのは誰かという問題もありますが、宗教上からも中絶が違法として定められていた時代の話として、現実としては生まれる前から重い障害があることが分かっていたり、暴行の末の妊娠だったりという場合もあり、何が人道的な解決なのかというテーマも取り上げています。

また、医学会の裏舞台や興味を引く専門用語の解説などがちりばめらているほか、人間の二面性、残された家族への迫害なども描かれ、ミステリー以外の部分で考えさせられる部分があり、長編ですが、最後まで楽に読めるのではないでしょうか?

マイケル・クライトン自身が認めているように、欠点は色々あるかもしれません。 例えば、犯人とラストの終わり方がいまひとつなところは否めません。 しかし、25歳の医学生が急いで仕上げたものとは思えない魅力と勢いがあり、かなり昔に読んだのですが、気に入って今でも持っている本の一つです。

関連リンク(ブログ内)

サイト内のご案内

27冊目 「恐怖の存在」

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年3月20日 (火)

21冊目 半落ち

横山秀夫著の「半落ち」ですが、しばらく積ん読く(つんどく)になっていました。 映画の話題も下火になり、完全にブームに乗り遅れましたが、最近ようやく読みました(w

評価:星4つ ★★★★

これが読み始めてみるとなかなか面白くて、2日の通勤電車で読んだ後、家で残りを一気に読んでしまいました。

物語は、現職警察官の梶総一郎がアルツハイマーの妻を殺し、2日後自首してきた事件について、刑事、検事、記者、弁護士、裁判官、そして刑務官それぞれの視点から語られます。

事件自体は単純で本人が自首していますが、殺人後自首するまでの2日間何をしていたのか、ということは黙秘を続けます。

警察内部の隠蔽体質から始まりますが、読んでいるうちに純粋に本人の空白の2日間がなんだったのか、何を待っているのかに興味が湧いてきます。

真面目で人柄の良い警官であった梶が、妻から「殺して」と頼まれてやった犯行・・・。 一度は後追い自殺を試みたものの、何処かを彷徨ってからの自首。 自首の直前に書いた「人生50年」の書。 それらが何を意味するものなのか。 それぞれの立場の人間が探ろうとします。

が黙秘する謎を次々にバトンタッチしていくような感じです。 ですが、それぞれの人にも物語があって、各章が独立した短編のようにもなっています。 謎は最後の刑務官の章で解けますが、通常のミステリのように謎を解くために読むというより、各登場人物の物語を読みつつ、それぞれの視点からこの事件を見ていくといった感じでした。

凶悪犯罪の捜査を指導するベテラン刑事と警察内部の闇、正義感に燃えるエリート検事と組織の圧力、特ダネを掴もうとする記者の挫折など個々のストーリーも読ませるものがあります。

推理することが目的ではないので、謎を独力で解くのは難しいと思いますが、最後分かった時、「ああ、そうか・・。」と哀しいながらもすっきりとした結末になっています。 映画は見てませんが、本で読んだ方が面白い話だと思います。 読んでいない方はぜひ、一読をお薦めします。

関連リンク(ブログ内)

サイト内のご案内

半落ち 文庫版

ハードカバー

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2007年2月 5日 (月)

18冊目 長いお別れ

ハードボイルドでお薦めの本は? と聞かれたら、迷わずレイモンド・チャンドラーの作品を挙げるでしょう。 「長いお別れ」(The Long Goodbye)はその代表作で、1954年に発表された長編です。

評価:星5つ ★★★★★

最初に読んだときは高校生の頃でしょうか、他に読みたい本がかなりあってさっと読んでしまって、この作品の味わい深さを分からないままでした。 その後「さらばいとしき女よ」や「高い窓」などを読んで気になり、読み返し、今回感想書くために読んで3回目となります。

あらすじですが、主人公で私立探偵のフィリップ・マーロウは、ひょんなことから、酔っ払って女に置き去りにされたテリー・レノックスを助ける。 これが元で何回か飲む仲間になるのだが、ある日事件に巻き込まれた風のテリーを空港まで送ったが、何日か後に彼がメキシコで自殺したことを知る。

妻殺しの犯人として自白の手紙も残されるが、マーロウにはテリーが犯人と信じられない。 しかも新聞でもあまり話題とならず、マーロウにはこれ以上事件に介入しないように圧力が加えられる。 テリーの死後、その死の直前に書かれたと思われる手紙が届き、中には20ドル紙幣と、バーでギムレットを飲んでテリー・レノックスの全てを忘れて欲しいとの言葉が遺されていた。

その後、アルコール中毒で行方不明の作家を探すという依頼を受けることになったマーロウ。 冒頭の事件とは一見何も関係もないと思われたが・・・・・。

作品の文章は奥が深く、よく読まないと登場人物の台詞の背景が分からないところもあります。 マーロウの皮肉っぽい台詞に思わずニヤリとしてしまいます。

主人公のマーロウはしがない私立探偵ですが、男としての確固たる信念というか、スタイルがあって、易きに流れず、あえて棹差す生き方をしますが、そんなところがマーロウの魅力なんでしょうね。 権力や暴力に臆せず、むしろそういう相手にこそ不遜な態度をとる一方、まったく得にもならないのに人を助けたり、妙に義理堅いところがあって、ハードボイルドという言葉がぴったり合う探偵だと思います。

今作ではマーローウ、ほとんどただ働きです・・・お金が入るチャンスはあったのに・・。 また、最後で2人の人間に「さよなら」を言いますが、ちょっと哀愁が漂います。 自分の生き方を変えてまで人と付き合えないということかな・・・。

推理小説・ミステリファンならば絶対にはずせない作品だと思いますし、そうでない人にもお薦めです。 題名の「長いお別れ」という言葉、そしてこの小説で有名な台詞「ギムレットにはまだ早いね」の深い意味を読み取れるまで読んでください・・・。

ちなみにギムレットとはジンベースのカクテルで、この作品では「本当のギムレットはジンとローズのライム・ジュースを半分ずつ、ほかは何も入れない」のだそうです。 ネットで調べると、名前のギムレットの由来はコルクスクリューに似た形をした大工道具の一種で、今はフレッシュライムジュースを使った辛口が主流だそうです。

「ギムレットにはまだ早いね」の意味は難しいですよね。 これも誰かが言っていたのですが、テリーとのことがいい思い出となって、昔を思い返すようにバーでギムレットを飲めるようになるには早すぎたという意味とか・・・。

貴方の解釈はどうですか?

追記しますと、今月(19年3月)ハヤカワ書房から、村上春樹の翻訳で「ロング・グッドバイ」として新たに販売されるみたいですね。 おそらくハードカバーではないのに2,000円ってのは、ちょっと高めかと思いますが、またレンモンド・チャンドラーが有名になるかも・・。

関連リンク(ブログ内)

サイト内のご案内

関連リンク(ブログ外)

カクテルバーMIXINGDRINKS ・・・ギムレットについて

こちら今月発売予定の「ロング・グッドバイ」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007年1月 7日 (日)

16冊目 魔術師の夜

刑事マロリーのシリーズ最新刊(とはいっても読んでから1年経っているのですが)を今回はご紹介します。 上・下巻2冊構成となっています。

評価:星4つ ★★★★

題名からも想像できるように、今回は被害者、容疑者共にマジシャンという設定です。 加えてマロリーシリーズで何度も名前が出ている伝説のマジシャン、マックス・キャンドルマラカイの過去も詳しく語られ、今まで張られていた複線が明るみに出た、という感じです。

あらすじは、マックス・キャンドルの遺した「失われたイリュージョン」を仲間のマジシャンが再現しようと、TVの前で3つのクロスボウから発射される矢をかわすマジックを実行します。 ところが、何かトラブルがありマジシャンは矢に貫かれて死んでしまいます。

事故の可能性が残る中、マロリー(いつものとおり)独自に捜査を始めますが、関係者はマジシャンばかり。 今までと違って一筋縄ではいきません。 一度ならずも罠にかけられ、TVからも名指しで批判され一時は捜査を止められてしまいます。

登場するマジシャンの中でも最も注目されるのが、今までも話では出てきたマラカイです。 記憶障害の病を持ちながらも未だ他のマジシャンとは一線を画す一流の腕前。 昔死んだ妻を未だ生きているかのように魅せる魔術、「ルイーザのコンツェルト」。

ポーカーに死んだ妻を参戦させ、誰もいないはずの席から投げられるチップ、そしていつの間にか灰皿に火がつき口紅のついたタバコが出現。 後半で拳銃を持ったマロリーと正面から対峙して鮮やかに切り抜ける手口。 実際にやるとするとかなり苦しいものもありますが、トリックどうこうより、綿密な準備と人の心理を巧みに利用したマラカイの手並みはまさに一流と言わざるを得ません。 

病のせいもあってちょっと狂っている面もありますが、端正で紳士的で腕は一流。 マジックをやる人ならば、一度はこんなマジシャンになってみたいと思うのではないでしょうか?

この話は、犯人が誰かということよりも、マロリーマラカイの戦い、そして恋愛(?)の物語といってもいいでしょう。 現在の殺人を解明するために過去、第2次大戦中まで話は遡ります。 果たしてルイーザの死の真相はどのようなものだったのでしょうか? そしてチャールズの恋の行方は?(笑)

最後、犯人に対するマロリーの冷酷な復讐がなんとも印象的でした。 マロリーシリーズを読んだ人はもちろん、マジックに興味を持つ人にもお薦めしたい作品です!

関連リンク(ブログ内)

7冊目 氷の天使

1冊目 クリスマスに少女は還る

サイト内のご案内

| | コメント (0) | トラックバック (4)

2006年11月23日 (木)

12冊目 すべてがFになる

森博嗣のミステリーを読んだことはありますか? 今回は森氏の作品の中でも有名なS&M(犀川&萌絵)シリーズの第1巻となる「すべてがFになる」を紹介します。

評価:星4つ ★★★★

大学の工学部助教授の犀川は、教え子の西之園 萌絵(にしのそのもえ)らゼミのメンバーと、孤島にキャンプにやって来た。 この島には研究所があり、そこには世界的に有名な天才プログラマー、真賀田 四季博士がいるのだが、14の時に両親を殺害して以来、研究所の一角に閉じこもり、面会謝絶となっている。

しかし、犀川たちが博士の部屋の前に来たとき、部屋の扉が開き、中からウエディングドレスを着た博士の死体が発見される! 部屋に残されたコンピュータのモニターには「すべてがFになる」とのメッセージだけが残されていた・・・・完全な密室で博士を殺した者とは? そして、何を意図しているのか? 

私は普段からあまり日本人作家のミステリーはあまり読まないのですが、このシリーズは結構気に入ってかなり読んでいます。 「理系ミステリ」と評されることが多いですが、確かに数学やコンピューター、建築工学などの話題が良く出てきます。 しかし、それよりも登場人物の考え方がかなり独特なのです。 

考え方が理系というか・・・人間性を排除したその思想は、なるほど、と思えるものもあれば、受け入れがたいものもあって、色々と刺激を受け、読んでいると自分の思考も研ぎ澄まされる感じがします(大袈裟かな・・?) 。

また、パソコンやウイルスの話が出てきますが、今でこそ常識といってもいいですが、作品が書かれたのが10年位前ということを考えると、先進的だったのかも。 コンピューターウイルスは生物なのか?なんて、面白い話題ですね。 生命を定義することは意外と難しいようです。

登場人物ですが、主人公の萌絵は幼い頃亡くした両親から遺産を継ぐとともに、一族も県警のトップや県知事夫人である、言わばお嬢様ですが、謎解きが好きで世間知らずですが行動力があります。 計算力に優れていて、冒頭でも「165×3367は?」と聞かれて、すぐに暗算してしまうほどです。 推理もランダムに色々なパターンを演算していく方式・・・導かれる結論はいまいちのことが多いですが・・。

萌絵の指導教官、犀川は探偵役をこなしますが、少しクールで独特の考えの持ち主です。 普段はあまりすごい人には思えないのですが、建築工学を専門としていながら、頭脳明晰で鋭い推理で事件の謎を解きます。 もしかすると、作者がこうありたいと思う姿なのかもしれませんね。

そして本作に出てくる世界的な天才と称される、真賀田 四季も存在感があります。 真賀田 四季が主人公のシリーズも別に出ているくらい人気があるようです。

私自身、森ミステリで始めて手に取ったのはS&Mシリーズ10作目「有限と微小のパン」でした・・・。 まあ、こちらを先に読んだので、本作での真賀田 四季はちょっと稚拙な印象を受けるし、まだまだ物語全体が粗削りな感じがします。 

それでもこの後に続く作品への期待感を高めるのに十分な面白さがあります。 なんと言ってもこのタイトルのつけ方がうまいですね。 個人的にはトリックより、登場人物の台詞を借りて語られる思想などが好きなんですが。

本格ミステリや定番のストーリーにはない独特の読後感が味わえます、読んでいない人はぜひ一度手に取ってください!

第2巻 「冷たい密室と博士たち」

シリーズ最終巻(10巻)「有限と微小のパン」

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月27日 (金)

9冊目 謎のクイン氏

珍しく、短編集を紹介します。アガサ・クリスティーの作品を読んだことのある人も、この本は読んでいないのではないでしょうか?

評価:星4つ ★★★★

アガサ・クリスティーの創造した探偵というと、ポアロやマープルなどが有名ですが、このハーリ・クインはまったく異質な存在です。 こんなタイプの探偵は他にはいないと思います。

積極的に事件を捜査するわけでもなく、腰掛探偵のような椅子に座って推理するわけでもありません。 不思議な存在、道化役者(ハーリクイン)。

クインは自分で事件を解決するわけではなく、他人の話を聞き、それとなくヒントを与え、口に出したものの、特に意識していなかったことに対して、まったく別の角度から光を当てるのです。 その瞬間、思いもよらぬ事件の真相が暴かれます。

もうひとつ特徴的なのが、事件が起こった現場に居合わせることはあまりなく、むしろ、事件から何ヶ月も、時には何年も!経ってから事件を解決してしまいます。 彼に言わせれば、「時が経てば経つほど、いっそう釣り合いの取れた見方ができるようになるものです。個々の事実の本当の関係がわかるというものです」ということらしいです・・。

そして、この物語の主人公といってもいいのが、サタースウェイト氏です。 歳は69歳で裕福で顔も広いが、家族もなく目立たない存在。 趣味は他人の人生を鑑賞すること。 聞き上手で観察眼にも優れています。

いつも傍観者として他人を眺めてきた彼ですが、クイン氏に出会って不思議な影響を受けて、人生という芝居の表舞台に、観客から出演者になる機会を与えられます。二人はコンビといってもいいでしょう。 彼の観察眼に、クインのヒントが加わり、事件が解決されていくのです。

加えて、作品のほとんどが恋人の物語でもあります。過去の出来事で誤解やすれ違いなどを起こして、もうどうしようもなくなった恋人たち・・・。 クインとサタースウェイトの活躍によって事件や謎が解かれるとともに、恋人たちが破綻から救われるのもこの作品の魅力かもしれません。

まあ、強いて難点を挙げれば、クインは超自然的な存在で、初めから謎が分かっているとしか思えないところでしょうか? 推理至上主義の人には減点ポイントかもしれません。 でも、そんなミステリアスな部分も私は気に入っています。

もともと、道化師は中世の宮廷にも仕える存在で、彼らはマジシャンの源流のひとつでもあります。 クインが不可思議な存在なのもうなずけますね(?) もっとも、クインは道化師よりマジシャンのほうが相応しい感じがします。

長編好きで、短編嫌いの私でも星4つをつけているこの作品。お薦めです!

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月15日 (日)

7冊目 氷の天使

女刑事、マロリーシリーズ第1巻となる、キャロル・オコンネル著「氷の天使」を今回は紹介します。キャロル・オコンネルといえば、第一回目で紹介した、「クリスマスに少女は還る」の著者でもあります。

 評価:星5つ ★★★★★

私自身は、「クリスマスに少女は還る」よりもこちらのマロリーシリーズを先に読んで、キャロル・オコンネルのファンになりました。

物語は、マロリーの育ての親である刑事、マコーヴィッツが連続殺人事件捜査中に犯人に殺されてしまったところから始まる。優秀な刑事だった彼がなぜ人気のないビルでの単独調査などという無謀なことをしたのか?老婦人ばかり狙う犯人の意図は?マロリーはマコーヴィッツの仇を求めて独自の捜査を開始する。

物語の主人公、女刑事マロリーのキャラクターはかなり強烈な印象を与えてくれます。ニューヨーク市警において女性で刑事というだけでもすごいですが、天才的な頭脳と鮮烈な美貌を持ち、強力な銃をいつも身につけてます。それでいながら、他の人間と馴染まず、誰も信用しない・・・まさに氷の天使

人間よりもコンピュータを信頼し、天才的ハッカーの腕前を駆使して、不法に情報を集めたりもします。彼女にかかれば、個人の銀行口座だって簡単に覗き見ることができてしまう。

他にも個性的な登場人物がたくさん出てきます。何かとマロリーのことを気にかけてくれる刑事仲間のライカーや、ずば抜けたIQを持ちながら人が良すぎてピエロを演じることも多い愛すべきチャールズ、マロリーを子供のときから知っている、一癖ある亡きマコービッツの親友たち・・。

周りの人間もマロリーの非人間的思考には困ってしまう。しかし、もし彼女の邪魔をしようとすれば、後で(もしくは即座に!)酷いしっぺ返しを喰らうことになります・・・。育ての父親と母親が亡くなった今、彼女に言うことを聞かせられる人物はほとんどいません(まあ、ライカーがなんとか、相棒として意見を言える程度・・・)。

そんな彼女と他人のやり取りもこの作品の面白さのひとつではないでしょうか?連続殺人の方も気になりますが、彼女がなぜこのような人間になったのかという、過去の出来事に興味がわいてきます。その話は、シリーズ4作目の「天使の帰郷」で詳しく語られます。

この作品に限らず、キャロル・オコンネルの作品には心に何らかの病や障害を持った人々が出てきて、その心情がよく描かれています。人間の内面という部分に重点をおいているんでしょう。

「へええ、そう。」という、マロリーの半分相手を馬鹿にしたような台詞や、ときどき入る太字で書かれた独白部分には思わずニヤリとしてしまいます。

ラストの急展開にはハラハラしますが、読み終わったとき、あなたもマロリーのファンになっているのではないでしょうか?

| | コメント (2) | トラックバック (2)

2006年10月13日 (金)

6冊目 奇術師の密室

マジックに興味はありますか?いつも昔に読んだ本を紹介してましたので、今回は最近読んだ、リチャード・マシスン著の「奇術師の密室」をとりあげます。

 評価:星3つ ★★★

この本を一言で表現するなら、どんでん返しの連続!です。展開もスピーディーで、100ページまで一息もつかずに一気に読んでしまい、通勤の電車でしか読んでいないのに、3日で読み終わってしまいました。

冒頭、ミスターキャベツなる人物からの挨拶があります。この本の主人公は偉大なマジシャンのなれの果て・・・水中脱出の際脳溢血を起こし、植物(キャベツ)人間になってしまった老人が語り手なのです。

植物人間になって目を動かすことしかできなくなったにもかかわらず、あまり悲惨さを感じさせません。割と元気みたいです。

そんな老マジシャンは息子とその嫁、嫁の弟と同居しています。車椅子に座るだけの存在ですが、息子は「マジックルーム」と呼ばれる奇術道具がいっぱいの部屋へいつも車椅子を押していってくれます。

そんなある日の出来事を書いているのですが、そこからがまったく奇想天外、本物のマジック顔負けの予想のつかない展開の連続です。

登場人物は、老マジシャン、父を継いで偉大なるマジシャンとなった息子のマックス、美人な妻カサンドラ、同居している妻の弟ブライアン、マックスのマネージャーのハリー、地元保安官のグローヴァーだけ。物語はは全て「マジックルーム」の中で進行していきます。

まず、カサンドラとその弟ブライアンが何か良からぬことを企んでいるシーンから始まり、次にハリーが登場し、カサンドラと不倫関係にあることが判明します。そして、突如その場所に夫のマックスが現れます(劇的に・・・)。

この時点ですでに嵐の予感です。でもまだほんの序章。父である老マジシャンの座を継いだ偉大なるマジシャン、マックスはなぜか体の具合が悪く、マジックも以前の用にできなくなっています。そして破れかぶれなのか、マジックショーを演じているのかまったく分からない狂ったような行動に走りだす!

作中では、マジックの原理や考え方などにも触れています。ネタバラシにつながる部分も若干ありましたが、う~ん、許容範囲なのかな・・・・。ステージでの立ち振る舞いとか、なかなかマニアックな内容も。手品をやったことのない人も、マジシャンがどんなことに気をつけているかが少し分かるのではないでしょうか?

起こった事件だけを見れば、醜い人間の壮絶な争いで実際殺人も起こります。でも奇術師が絡むことによってどれが現実で、どれが幻想なのか分からないまま、次々と展開していくので、成り行きを見守ることしかできない老マジシャンの言葉を借りれば、「気持ちはヨーヨーのごとく宙ぶらりんだ。あがったりさがったり、出たり入ったり・・・」といった感じです。本当に最後まで油断できません。

ラスト、この前代未聞の残酷な物語が終わったとき、ささやかな奇跡が起こります。読者を散々振り回す物語ですが、次にどちらに曲がるか分からない、まるでスペースマウンテン(ディズニーランドのジェットコースター)に乗ったような爽快感が味わえるのではないでしょうか。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2006年10月 7日 (土)

2冊目 そして誰もいなくなった

前回に紹介しかけたので、今回はアガサ・クリスティ著の「そして誰もいなくなった」です。

評価:星5つ ★★★★★

ミステリーの女王、アガサ・クリスティの代表作の一つで、有名すぎていまさら紹介するのもためらわれますが、自分の好きな本を紹介していく以上、この本もはずせません。

それぞれ見も知らぬ10人の男女が孤島に招待されるが、その島での最初の夕食時に、録音機から10人がそれぞれ過去に殺人を犯していると告発されます。そこから一人づつ見えない犯人に殺されていく・・・古いインディアンの子守唄になぞらえて・・・。

ここまで読んで、「よくあるパターンじゃないか!」と思った方、このパターンは「そして誰もいなくなった」が初めてなんです!(厳密に調べてませんけど、おそらく)

犯人はこの中の誰かか?、という緊張感と次第に減っていく招待客、今ではありがちな話ですが、やっぱりスリリングで面白いですよね。人数が減るにつれてあいつが犯人?あれ、違う・・みたいに誰もがあやしく思えてしまう。

犯人とトリックは最後に明かされます(エピローグで)。これについては賛否両論ですが、トリックが論理的で読者にもパズルのように解く機会が与えられなければならないと思っている人には、「邪道」と言われるのでしょう。しかし、逆に、どんなにすばらしいトリックでもそもそものストーリーがつまらなくては本末転倒だと思います。

本格推理という分野からは異端視されるのでしょうけど、私はアガサ・クリスティの作品の中で一番好きな作品です。(問題作の「アクロイド殺し」も好きですが・・)

最後に、子守唄の10番目を引用して締めくくります。

『 一人のインディアンの少年が後に残された。彼が首をくくり、後には誰もいなくなった 』

果たして、ラストはどうなるのでしょうか!? 読んでいない人はぜひお薦めします。

| | コメント (0) | トラックバック (1)

2006年10月 4日 (水)

1冊目 クリスマスに少女は還る

最初に 紹介するのは、キャロル・オコンネル著の「クリスマスに少女は還る」です。

評価:星5つ ★★★★★

キャロル・オコンネルの作品は、刑事マロリーシリーズを読んでファンになりました。この本はずっと前に読んだのですが、他の紹介文を見てもかなり高評価を得ていると思われます。

ストーリーは、クリスマスを控えた町で二人の少女が誘拐され、刑事が捜査に乗り出す一方、誘拐された少女たちも監禁状態から必死で脱出を試みる話です、と書いてしまうと、ありがちな話に思えてしまいますね。しかし、それは違います。

この物語はミステリーであり、推理小説であり、脱出を試みる少女たちの物語でもある・・そしてホラー?(読んだ人ならわかりますよね)でもある・・・。

まず、主人公格の少女、サディー・グリーンの際立ったキャラクター。ホラー好きで、いたずら好き、衣服から自転車まで紫づくしの問題児。でも、憎めない、ウィットに富んだ少女。作り物の矢を胸に刺し、血糊つけて死んだ振りをして騒ぎを起こしたりと、とんでもないことを平気でやりますが、この本を読み終わるころには、誰もがサディーを好きになるのではないでしょうか。

もう一人の少女グウェンは、州副知事の娘でサディーに比べたらまったく普通の娘(でも後述するように、本当は芯がすごく強いのかも・・)。本を読んだのがかなり昔なので、刑事のルージュはいまいち記憶にありません・・すみません。でもこういったキャラクターそれぞれがとても個性的に、丁寧に描かれています。

そして、捕われた少女たちの運命をハラハラしながら読み進めていくと、ラストにすごい衝撃が待っています。このラストはちょっと想像つかないでしょう。私にとって、子供のころアガサクリスティの「そして誰もいなくなった」を読んだとき以来の衝撃でした。

クリスマスに起こる奇跡・・・。

このラストをどう解釈するかは、読者にゆだねられている点もこの本が長く記憶に残る要素でしょう。個人的には、やはり、最初から独りだった(ネタばれになるのでこれ以上書けませんが)と思ってます。

なぜなら、キャロルの他の作品でも「人のこころ」の問題、その深さをテーマの一つに置いているように感じるからです。極限状態の人の心理。このことから、グウェンって芯が強いのかな・・と感じてしまう。

エピローグの神父と母親のシーンで、サディーに対する親近感や様々な感情が押し寄せてきます。もちろん、ラストを私と違う解釈をした人はまた感じ方が異なるのかもしれません。

最近読んだミステリーで、この本以上に人にお薦めできるものはまだないかなー、と思いますので、ミステリファンなら必読、そうでない人にもぜひ!読んでもらいたいです。

ちなみに、本の画像をクリックすると購入できるサイトへジャンプしますのでよろしければ・・なんてずうずうしく言ってみたりして・・・(w

| | コメント (2) | トラックバック (1)