2008年1月13日 (日)

28冊目 古王国記 サブリエル

古王国記Ⅰ、「サブリエル」 (副題「冥界の扉」、ガース・ニクス著、主婦の友社)をご紹介します。 本の帯には、 「ダークファンタジーの最高傑作」と評されていますが、世界設定や魔力をもったベルを武器として戦うアブホーセンなどのキャラクターがとてもユニークで、出版社がちょっとマイナーなのでなかなか本屋で見つけづらいですが、ファンタジーファンの方にはぜひお薦めしたい一冊です。

「サブリエル」ガース・ニクス著、主婦の友社  

 

 

 評価:星4つ ★★★★

ダークファンタジーとありますし、確かに死霊やらネクロマンサーやら冥界などが出てきますけれど、それほど暗くてじめじめした話でもないと思いますので誰が読んでも楽しめるのではないでしょうか? 評価も星5つに惜しくも届かずといった高評価。

まず、世界設定ですが、アンセルスティエールという20世紀前半のヨーロッパを連想させる通常の世界と、古王国と呼ばれる魔法の世界が巨大な壁を境に存在する形になっています。

壁は強力な魔法の壁で門を通る以外ほとんどの者を阻みます。 また、門はアンセルスティエールの軍隊が防衛しています。 車や電気機器などの近代文明の物は古王国内ではまったくの無力で、すぐに壊れてしまう一方、魔法はアンセルスティエールでは使用できなくなってしまうというちょっとご都合主義な設定です。

古王国は王が不在で摂政が治めていましたが、今では音信不通で中に入って生きて戻ってきた者はいないと言われるようになってしまっています。

そんな中、主人公のサブリエル古王国出身でありながら、アンセルスティエールの学校に通っています。 学校は壁に近いので魔法も多少使うことができるのです。

昼は普通に勉強し、夜は父親から魔法的な手段での連絡を待って魔法を学んでいたが(ネクロノミコンなんてものを読んで勉強しています・・・)、あるとき父親からの連絡が途絶えてしまいます。

最後に受け取った魔法の剣とネクロマンサーのベルを手に、アブホーセンと呼ばれる父親の消息を確かめに死霊がはびこる古王国へと踏み出していく・・・というのが物語の出だしです。

ここでアブホーセンについて説明すると、ネクロマンサーと同等の技を身に着け、ネクロマンサーに対抗し、死霊を冥界に追い返すというとても危険な職業です。

ベルは全部で七つあり、一番目のベルは聴く者を眠りに誘う「ランナ」、二番目は眠りを呼び覚まし死者すら起こす「モスラエル」、三番目は聞く者を操り動かす「キベス」、四番目は声を与え秘密を暴き逆に声を奪うこともする「ダーリム」、5番目は思考を操る「ベルガール」、6番目はアブホーセンがよく使う死霊を縛り付ける「サラネス」、7番目の最終のベルが「アスタラエル」で哀悼のベルと呼ばれ、最も強力で音色を聴く者全て(鳴らした本人も!)を冥界の奥底へ追いやってしまう。

それぞれのベルに癖があり、使い方を誤ると手痛いしっぺ返しがあるのですが、このベルが物語の中で重要な役割を果たしますし、面白い部分です。

さらに、死霊と戦うアブホーセンは冥界にも降りていきます。 冥界は第1層から9層まであり、それぞれの層に違う罠があり、奥へ行くほど危険は増していきます。 ここではベルと死霊の書の知識だけが武器となります。

他にも、チャーター魔術という、古王国で一般的に使われる紋章術のような魔法や、フリーマジックという使用する者の舌を焼き、心を腐らせる闇の魔術も存在して、慣れるまで分かりづらいところがあります。

また、途中でサブリエルと行動を共にするモゲットという喋るネコが皮肉屋で物語にスパイスを与えています。 猫だけに(?)気分屋で謎めいたところもあり、時にはサブリエルにも牙をむいてきます。 本当の正体が明かされるのは古王国記Ⅲ「アブホーセン」まで待たなければなりません。

物語中盤では二百年も昔から石像にされていたタッチストーンと名乗る青年も仲間に加わり、古王国を支配する闇を追い払うために、強大な敵と戦うことになっていくのです。

近代文明世界と魔法の世界を行き来する物語なので「ハリーポッター」を連想するかもしれませんが、読んでみるとそれほど共通点はありません。 壁の付近では魔法の存在も認知されていて、死霊と軍隊の戦闘シーンもあります。 それでいながら、陳腐な内容になっていないところが絶妙なバランスですね。

サブリエルの物語はこの上下2巻で終わり(物語には出てきます)、古王国記Ⅱ「ライラエル」Ⅲ「アブホーセン」ではライラエルという女性が主人公となって活躍します。 ライラエルと行動を共にするのは犬で、これも話すし、見た目通りの存在ではありません。 説教好きですが犬だけに(?)モゲットと違って忠実です・・・。 こちらもファンタジーファンなら見逃せません。

関連リンク(ブログ内)

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古王国記Ⅰ「サブリエル」(上巻)

古王国記Ⅰ「サブリエル」(下巻)

古王国記Ⅰ「サブリエル」(ハードカバー)

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2007年12月31日 (月)

27冊目 恐怖の存在

「我々は環境問題の各方面について驚くほど実態を知らない」。 マイケル・クライトン(ハヤカワではマイクル・クライトンと表記)の「恐怖の存在(上・下巻)」を紹介します。

恐怖の存在 マイケル・クライトン著(ハヤカワ文庫)  

 

 

評価:星3つ ★★★

マイケル・クライトンが本作(State Of Fear)を発表したのは2004年だそうです。 地球温暖化といえば今では誰もが知っている問題で、二酸化炭素排出権ビジネスまで一般的に認知されるほどですね。

本作では、気象災害を引き起こす環境テロリストの陰謀を食い止めるというストーリーを展開しながらも、「地球温暖化説は単なる仮説で立証されていない」、と作者の意見が打ち出されています。

詳しくは本を読んで欲しいのですが、世界の平均気温と二酸化炭素濃度は確かに上昇しているが、それが二酸化炭素による、いわゆる「温室効果ガス」によるものとは断定できていないというのです。

また、世界の平均気温の測定方法や海面の上昇の測定方法に色々な不確定要素があることや、果たして南極の氷は溶けているのか?といった様々な疑問が作中の人物の口を借りて語られます。

ここまで聞くと、環境問題に敏感な人ならば、「けしからん!」となってしまうかもしれません。 しかし、マイケル・クライトンは環境保護をしなくても良いとか、二酸化炭素を排出しても問題ないとか、そんなことを言っているわけではありません。

さらに言えば、地球温暖化現象を否定しようとしているわけでもないのです。 ただ、「地球温暖化」というキーワードが出るとそれに反論すること自体がタブーとされ、科学的な議論もないがしろにされていることに危惧しているのです。

マイケル・クライトンが作中で「恐怖の極相」と表現する民衆を恐怖という道具でコントーロールしていくこと、それを行っている政治・法曹・メディアの複合体に対する注意喚起こそがこの作品が伝えたい部分なのです。 なんだか、マイケル・ムーアの「ボウリング・フォー・コロンバイン}を思い出しますね。

まあ、マスコミやみんなが言っているから、というだけで鵜呑みにするのは危険ですよね。

ただ、マイケル・クライトンも偏った書き方を昔からするので、「?」な部分もあったりします。 日本人としては「ライジングサン」なども偏見で書かれた問題作ですよね(w 

ともあれ、ストーリー自体もスピーディーな展開のアクションで、先を読ませる魅力は十分あります。 まあ、ハリウッド映画にありがちなストーリーではありますが、なかなか楽しめました。

関連サイトとして下記にワシントンDC開発フォーラムへのリンクも載せました。この作品に対する反論や、問題点が記載されています。 まあ、ざっと読むと、個々の細かい問題にしか反論できていないようにしか見えませんが。

関連リンク(ブログ内)

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22冊目 「緊急の場合は」

関連リンク(ブログ外)

ワシントンDC開発フォーラム・環境ネットワーク

恐怖の存在(上巻)

恐怖の存在(下巻)

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2007年9月27日 (木)

26冊目 極大射程

今回はスティーブン・ハンター著、「極大射程」(上・下巻、新潮文庫)を紹介します。 題名からも想像つくように、スナイパーが主人公の軍事・アクションものです。

映画化もされていて、「ザ・シューター」という名でレンタルビデオにも今並んでいます。この感想を書く前に一度見てみたかったのですが、先週は三連休だったせいかすべて貸し出し中で見れませんでした。

「極大射程」新潮文庫 

 

 

 

評価:星3つ ★★★

物語は、退役軍人で名狙撃手だった、ボブ・リー・スワガーが山の中で静かに鹿を待ち伏せするシーンから始まります。 戦友を失い、自らも重傷を負った挙句、ベトナム戦争への批判も追い討ちとなって、今では人との関係を絶って山奥に暮らしているのです。

そんなボブの元に腕の確かな狙撃手に新開発の弾丸を試射して欲しいとの依頼が舞い込みます。 相手が見かけどおりの組織ではないと疑いながらも、軍を退役した原因でもあり、相棒のかたきでもある敵スナイパーに仇討ちをできる機会をちらつかされ、再び山を降りたボブは国家レベルの陰謀に巻き込まれていく・・・。

巧妙に仕組まれた陰謀からどのように逃れるのか、そして復讐は叶うのか。 軍事ものが嫌いな人はともかく、先を早く読みたくなる展開が続いていきます。

何百メートルも先から標的を狙うスナイパー。 狙撃ポイントの選び方やライフルのことなど、狙撃に関する知識もちりばめられ、なかなか面白かったです(もっとも、軍事マニアな人たちからすれば、色々問題があるようですけれど・・・)。

ただ、ボブ・リー・スワガーが超人的な強さで常に敵を圧倒しつづけるところはやりすぎかなぁと思ったりします。 特に後半、一人で軍の1部隊を撃退するのはどうかと・・・・最後の敵もあっけなくやられてしまいます。 まあ、爽快感はありますが。

どちらかというと、先に敵の手口が明らかにされて、その巧妙な罠をいかにしてボブが切り抜けるか、といった楽しみ方でしょうか。 なんか、刑事コロンボみたいだなぁ・・・(w

数奇な運命からボブと行動をともにするようになるのは、FBI捜査官のニック・メンフィスで、過去狙撃を失敗して人質の女性を半身不随にしてしまった辛い過去を持っている人物です(ちなみに、ボブは同じ状況のシュミレーションでなんなく狙撃成功・・)。

物語にニックを加えたことにより、ボブを第三者の目線で見れて深みが出てる気がします。 濡れ衣とはいえ、要人暗殺の犯人となっているボブと一緒になってしまった哀れなニック、彼は再びFBIに復帰できるのでしょうか?(w

また、始終怯えている心理学者、ドブラーも最後名脇役として活躍!? 最後は生死不明になりますが、きっとしぶとく生きているのではないかと。

長い戦いを終え、敵を倒した後も舞台を法廷に移してピンチに陥ります。 ちゃんと読んでいた人なら最後の展開は予測できるでしょうけど、まあ、気持ちのよいほどにボブの独り勝ちです(w ここでもニックが哀れでなりません・・・。

スナイパーものというと、ジェイムズ・セイヤーの「地上50m/mの迎撃」も面白かった記憶があります。 この本が楽しめた方ならぜひご一読を。

後日談になりますが・・「ザ・シューター」をレンタルで借りて観てみました。 う~ん(w まあ、ストーリーや設定を変えているところはそんなに気にならないのですが、スワガーが必殺仕置人みたいになっていますね・・・。 白兵戦もするし・・・正義のためなら何をしてもよいと言わんばかりのラストでした。

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軍用スナイパーライフル(狙撃銃)

東京サバイバルゲーム チーム METAL・BEE様のHP(勝手にリンクを貼らせていただきました・・)

極大射程(上巻)

極大射程(下巻)

地上50m/mの迎撃

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2007年6月17日 (日)

25冊目 エレコーゼサーガ「剣のなかの竜」

マイケル・ムアコック永遠の戦士シリーズの核をなす「エレコーゼサーガ」がハヤカワ文庫から復刊されました! 題名は旧巻では2巻目にあたる「黒曜石の中の不死鳥」となっています。 それを記念して(って大袈裟ですが)今回はエレコーゼサーガ最終巻にあたる「剣のなかの竜」を紹介します。

エレコーゼサーガ「剣のなかの竜

 

 

 (*図は旧巻のものです)

評価:星5つ ★★★★★

第1巻「永遠の戦士」、第2巻「黒曜石の中の不死鳥」もいずれ機会があったらご紹介したいと思いますが、個人的に第3巻にあたる「剣のなかの竜」が最も優れた作品だと思っていますし、長編で読みごたえもあるため、こちらの感想を先に書く次第です。 

また、一応「黒曜石の中の不死鳥」の話の続きから始まる形ですが、エレコーゼの話は毎回転生するので、この巻だけでも十分楽しめます(マイケルムアコック初めてという場合は厳しいでしょうけど・・・)。

さて、今回エレコーゼが呼び出される世界は、6つの違う次元をそれぞれ行き来できる世界です。 この世界での英雄であるフラマディンという人物になる訳ですが、今回は単純な英雄物語ではありません。

しばらく経つうちに徐々に明らかになるのですが、フラマディンには双子の妹がおり、実質的には妹のシャラディムが実権を握っており、それに抵抗したフラマディンは永遠に国外追放されたお尋ね者なのです。 

英雄として常に戦ってきたエレコーゼとしては意外な展開で、この後登場するエルミザードそっくりのヒロイン、アリサードともいまいちうまくいきません。 英雄の介添人役のフォン・ベックアリサードの仲に嫉妬するところまで墜ちてしまいます(w

混沌の手を借りて世界を征服しようとするシャラディム姫エレコーゼ達は対抗できるのでしょうか?

ラストも今までの永遠の戦士の物語とは違った終わりを迎えます。 なぜなら、この作品は「ブラス上年代記」の第3巻で永遠の戦士シリーズが一応の終わりを迎えた後に書かれた物語で、ムアコック自身の考え方も以前の人間に否定的なものから、英雄への懐疑、人間の再評価というものに変わってきているからです。

物語の後半で、英雄という役目に縛られ、潰されそうになったエレコーゼに対して、フォン・ベックが言います。 「あんたの身に起きたことを変えることはできまい。だが、あんたが何になったかは変えることができる ~ あんたは、自分がなったものを、変えることができるんだ!」 この言葉が今回の重要なテーマになっていて、この選択を誤れば悲惨な運命が待っていたかもしれません。

他にも結構名言があって、「人間一番腹を立てるのは、物事を自分に都合よく誤認していたことに気づいたときだというが、まことにもってそのとおりだな!」など、諧謔(かいぎゃく)精神にあふれる台詞も楽しみの一つです。

今までのエターナルチャンピオンシリーズとは違うコンセプトとはいっても、いつもの法と混沌と天秤という話は変わらないですし、セピリズ曲がりのジャーメイスといったお馴染のキャラクターも出てきます。

他にも、6つの世界が舞台のため、人間のほかに食人の習慣があるという「亡霊女」や、太古から存在する(なんと、宇宙のサイクルを4サイクルも経験した)「熊の王族」など、様々な種族が登場するほか、混沌の中心でも歪曲されず、法の存在であることを貫き通すユニコーンや、聖杯、最後の戦いのためだけに生き続ける「時の果ての戦士」なども出てきます。

また、最後は混沌の大公爵、バラリザーフとの壮絶な戦いも描かれ、エルリックサーガに繋がる物語として、「王の指輪」「ストームブリンガー」「モーンブレイド」がどのようにして生まれたのか、メルニボネの祖先がどのような人々だったのかを暗示させる部分もあり、ファンとして見逃せないストーリーとなっています。

ラストは、友人の誘いを断って、あれが正しい選択なんだろうな・・・とは思うものの、どことなく寂しい感じですね。 でも、ついていっても、あの後メルニボネに続くのか・・と思うと微妙ですが(w  ジョン・デイカーとはムアコックの分身みたいなものなんでしょうか。

追記

書店に行ったら、もう新刊版がでていました。ちらっと見た感じでは、内容は手を加えてない感じです。 旧版を持っていない方はお薦めです。

まだアマゾンの検索では新刊が出ていないみたいですが、ハヤカワオンラインで購入できます。>>新刊版のアマゾンへのリンクを追加しました。

関連リンク(ブログ内) 

3冊目 エルリックサーガ 「メルニボネの皇子」

11冊目 ストームブリンガー

13冊目 紅衣の公子コルム

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剣のなかの竜(新版)

剣のなかの竜(旧版)

黒曜石のなかの不死鳥

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2007年5月 4日 (金)

24冊目 ハゲタカ

「ハゲタカ」真山仁著)はテレビ化されて、2月から3月までNHKで土曜に放送していましたので知っている人も多いと思います。 テレビの方は結局あまり見れなかったのですが、原作の方を読んでみました。

ハゲタカ 真山仁著

 

 

 

評価:星4つ ★★★★

テレビの方は少し見た限りでは、銀行員の柴野とファンドマネージャーの鷲津が以前銀行で上司・部下の関係で、その時の因縁やバブル期の中小企業苦しさなどが前面に出され、原作にはいなかった女性記者を加え、何か人情物の様なストーリーになっていたように感じました。

原作の方は上・下巻でボリュームもあり、柴野鷲津を中心にしながらも、鷲津を師と仰ぐ、米投資銀行のリン・ハットフォードアラン・ウォードや、伝統あるミカドホテルを所有する松平家一族などの様々な人物が、バブル後の激動の人生を歩んでいく様子が語られます。

バブル崩壊はどのようにして起こったのか、ハゲタカと呼ばれた外資系ファンドの実態はどのようなものだったのかが、銀行側、企業側、ファンド側とそれぞれからの視点で描かれています。

もちろん、ノンフィクションではありませんが、実際の出来事を絡めていて、現実味があって迫力があります。 当時マスコミで盛んにバブルについて、政府が悪い、行政が悪い、貸し渋りをする銀行が悪い、ハゲタカ外資にいいように買い叩かれているなどの批判が報道されていましたが、この本を読むとまた違った一面が見えてくる気がします。

「世の中全体がバブルに浮かれていた」 「無理に貸した銀行が悪い」、確かにそれもあるでしょう。 でも何か他のものに責任転嫁する日本人の悪い癖が出ていないでしょうか?(一応断っておきますが、私は銀行員でも金融業者でもありません・・・あしからず(w

物語は、アメリカでピアニストを目指していた鷲津政彦が日本からある知らせを受けたことが原因で、再びファンドマネージャーとして金融の世界に舞い戻るところから始まります。

そして、柴野の勤める銀行でのバルクセール(多数の不良債権をパッケージ化して、投資ファンドなどに一括売却する手法)を実施する場面で二人は出会います。 バブル後増加していく不良債権の処理が銀行の課題となっていますが、まだこの時点では本当に深刻な事態になってはいない様子。 日本で始めての手法とはいえ、鷲津リンアランのグループにいいように買い叩かれてしまいます。

パッとしない風采でありながら、ゴールデンイーグルの異名のとおり狙った獲物は逃さず、困難な状況もあっと驚く手段で乗り越えてしまう鷲津。 ゴールドバーグ米投資銀行の日本法人で重職にありながら、鷲津たちと行動を共にする外国人美女、リン。 ゴールドバーグから鷲津のファンドに移籍した、大のゲーム好きで明るいアラン

この3人を中心にバブル後の日本で起こった数々の事件、山一證券や長期信用銀行、東京相和銀行、足利銀行の破綻などがフィクションを交えながらも、当時新聞やニュースで見るより臨場感のある描写で語られていきます。

一方の柴野の方は、三葉銀行を辞めた後、知り合いのスーパーを事業再生させるべく奮闘していきます。 さらに、ミカドホテル創業者の娘である松平貴子の外資ホテルでの活躍から一転、ミカドホテル再生へのつらく長い物語もあります。

これら三者が時に交わりながらもそれぞれの物語を綴っていき、バブルとは何だったのか、そして日本の抱える矛盾と闇が語られているように感じました。

この物語、フィクションということで実際の会社名などを文字っていますが、1字だけかえたようなものが多く、三葉(=三和)銀行や足助(=足利)銀行、ゴールドバーグ・コールズ(=ゴールドマン・サックス)をはじめ、すぐ想像できてしまうものが多く、それがフィクションでありながらリアリティを増していました(良いのかどうかはわかりませんが・・・)。

なお、もっと作品のモデルとなった企業等を知りたい方は、ブログ「ニッポンの東南角部屋から」にたくさん載っていました、勝手に紹介させていただきます。

ドラマでのサンデートイズは、原作では太陽製菓となっています。同族企業、バブル期の無理な不動産投資、公私混同など問題点は共通していますね。 ただ、太陽製菓のお菓子が「ハニーコーン」であるなど、どこの企業か分かってしまうので玩具会社に変更したのでしょう。

物語のラストで、鷲津がそもそも日本に舞い戻る切欠となった事件への復讐が果たされますが、まあ、ラストだけはちょっと弱いというか、なんとなく終わったという感じでした。

それでも中盤は手に汗握って読み進みましたし、経済や金融に詳しくない人でも十分に楽しめる作品だと思います。 次回作のハゲタカⅡ(バイアウト改題)も今読んでいますので、そのうちにご紹介します。

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「ニッポンの東南角部屋から」

ハゲタカ(上巻)

ハゲタカ(下巻)

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2007年4月22日 (日)

23冊目 アークエンジェル・プロトコル

過去のお薦め本紹介からちょっと離れて、積読となっていた本を消化。 「アークエンジェル・プロトコル」という本です。 ライダ・モアハウスって著者も初めて見ました。

アークエンジェル・プロトコル ライダ・モアハウス著 ハヤカワ文庫

 

 

 

評価:星3つ ★★★

ジャンルは迷いましたが、SF扱いにしました。 でも、アメリカ私立探偵クラブ賞受賞しています。 まあ、SFとハードボイルドとファンタジーを詰め込んだ本と言ったほうが分かりやすいかもしれません。

評価も、始めは星3つをつけようかと思ってました・・・いきなり「リンク天使」とか「メデューサ爆弾」とかでてきて、さらにSF慣れしていない自分には世界観になじむのに時間がかかったからです。 でも、慣れてくると結構面白かったり・・・2作目まで読みたいかというと微妙ですが、この本自体は中盤からラストまでは一気に読んでしまいました。

世界観は、「甲殻機動隊」(士郎正宗著)の電脳化された世界とレイン」(serial experiments lain)での概念、リアルワールドワイヤードなどを連想させます。 それにミカエルをはじめ四大天使、モーニングスター(明けの明星)など宗教やファンタジーの世界もミックスされています。 あ、主人公は女刑事で凄腕ハッカーってのもなんとなく何かに似てますね・・・(w

舞台は2075年くらい?で、アメリカです。 しかし、人類の科学と戦争が「メデューサ爆弾」という恐ろしい兵器を生み出し大きな被害が出たこともあり、宗教が政治や生活を支配する世界になっています。

一方、人々はこめかみに端末を埋め込んで、直接ネットに繋がる「電脳」が普及。 ネットにつなげない貧困層や犯罪などではずされた人はその恩恵に与れません。

そんな中、リンク(ネット)の中に「天使」が光臨するという事件が起き、人々に直接イメージや感情を与える通常不可能な奇跡を起こし、ほとんどの人が本物の天使だと信じるようになります。 それがネット上に現れる神の使い、「リンク天使」と呼ばれる存在です。

やっと、あらすじですが(w 主人公のディードリはネット上の犯罪を取り締まる女捜査官でしたが、同僚の起こした事件に巻き込まれる形で解雇され、宗教上も破門となり、リンクもできなくなります。

しがない私立探偵となった彼女ですが、ある日「リンク天使」は偽者の天使なので正体を暴いて欲しいと依頼を受けます。 それがきっかけで本物の天使やら天才ハッカー「マウス」、現政府へのレジスタンスなどを交えた壮大な物語が始まるのです。

上でも述べたとおり、SFとハードボイルドと宗教(ファンタジー?)を混ぜたようなこの作品、でも決してハチャメチャなストーリーになっているわけではありません。 ハードボイルドを物語の格子に据え、世界観はSF、概念は宗教と見事に融合しているんじゃないかと思います。

オーソドックスな話に食傷気味な方、興味を持った方は一読されることをお薦めします。

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2007年3月20日 (火)

21冊目 半落ち

横山秀夫著の「半落ち」ですが、しばらく積ん読く(つんどく)になっていました。 映画の話題も下火になり、完全にブームに乗り遅れましたが、最近ようやく読みました(w

評価:星4つ ★★★★

これが読み始めてみるとなかなか面白くて、2日の通勤電車で読んだ後、家で残りを一気に読んでしまいました。

物語は、現職警察官の梶総一郎がアルツハイマーの妻を殺し、2日後自首してきた事件について、刑事、検事、記者、弁護士、裁判官、そして刑務官それぞれの視点から語られます。

事件自体は単純で本人が自首していますが、殺人後自首するまでの2日間何をしていたのか、ということは黙秘を続けます。

警察内部の隠蔽体質から始まりますが、読んでいるうちに純粋に本人の空白の2日間がなんだったのか、何を待っているのかに興味が湧いてきます。

真面目で人柄の良い警官であった梶が、妻から「殺して」と頼まれてやった犯行・・・。 一度は後追い自殺を試みたものの、何処かを彷徨ってからの自首。 自首の直前に書いた「人生50年」の書。 それらが何を意味するものなのか。 それぞれの立場の人間が探ろうとします。

が黙秘する謎を次々にバトンタッチしていくような感じです。 ですが、それぞれの人にも物語があって、各章が独立した短編のようにもなっています。 謎は最後の刑務官の章で解けますが、通常のミステリのように謎を解くために読むというより、各登場人物の物語を読みつつ、それぞれの視点からこの事件を見ていくといった感じでした。

凶悪犯罪の捜査を指導するベテラン刑事と警察内部の闇、正義感に燃えるエリート検事と組織の圧力、特ダネを掴もうとする記者の挫折など個々のストーリーも読ませるものがあります。

推理することが目的ではないので、謎を独力で解くのは難しいと思いますが、最後分かった時、「ああ、そうか・・。」と哀しいながらもすっきりとした結末になっています。 映画は見てませんが、本で読んだ方が面白い話だと思います。 読んでいない方はぜひ、一読をお薦めします。

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半落ち 文庫版

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2007年3月 8日 (木)

20冊目 呪われし者の女王

アン・ライスヴァンパイア・クロニクルシリーズの3作目、「呪われし者の女王」を今回はご紹介したいと思います。 前作「ヴァンパイア・レスタト」の最後、ロックコンサートの騒動の後にアカシャにさらわれたレスタトがどうなるのか、その続きと結末が本作で語られます。

呪われし者の女王

 

 

 

評価:星4つ ★★★★ 

呪われし者の女王とは、前作でヴァンパイア・マリウスが古代から護ってきた、全てのヴァンパイアの始祖であり、動かぬ彫像として安置されていたアカシャのことです。 

古代エジプトの時代からヴァンパイアとして蓄えた力は想像を絶するものがあり、世界中の人間の思念を受信し、天敵である太陽すら表面を焦がすにすぎません。 超高速で空を飛べる上、前作の最後でも使われましたが、念じるだけで人間やヴァンパイアを殺せるほどの力を持っています。

今まで石像のようにほとんど動かなかった彼女がレスタトに刺激され目覚めるわけですが、なぜ各地のヴァンパイアを襲ったのか、そしてレスタトをさらって何をしようとしているのか? アカシャの恐るべき野望も後半で明らかになっていきます。

上巻の前半は時間を巻き戻って、前作の最後、レスタトのコンサートに至るまでの他のヴァンパイアや人間の様子が語られます。 

アカシャの目覚めに直面したマリウスの危機とヴァンパイア達の王であったエンキルの最期。 それを助けに向かうパンドラサンティーノ。 この辺りで登場するヴァンパイアたちは前作では存在すら疑われていた伝説のヴァンパイアです。

ヴァンパイア・アルマンと元記者のダニエル(インタビューウィズヴァンパイアでヴァンパイア・ルイにインタビューした人物です)の物語。 若いヴァンパイア達がアカシャに襲われる様子。 世界中の超常現象を調査している団体、「タラマスカ」の女性調査員ジェシーの一族に関する謎。

それらの中で繰り返し現れる夢が「双子の夢」です。 それが何を意味するのか? 謎を置いたまま物語は先に進みます。

後半になると、レスタトアカシャの話と、「最初の血」と呼ばれるアカシャと並ぶ最古老のヴァンパイアの元に生き残りの他のヴァンパイアが集まり、「最初の血」、マハレが語るヴァンパイアの歴史の真実と悲劇の話が交互に繰り返されます。

そしてクライマックス、アカシャの野望を止めることができるのか? 始祖であるアカシャを傷つけたり、殺したりすれば、他の全てのヴァンパイア達にもはね返るという現実にどう対処するのか?

今回は前半(特にアルマンとダニエルの話)が長くて同性愛っぽい雰囲気だったのと、アカシャの力が強力すぎて現実離れしていたことなどもあって、前作星5つに対して4つと評価しました。

また、男性がいなければ、戦争や殺人は起こらなくなるなど、ちょっとそれは違うのでは?というテーマに対して、登場人物たちも乱暴な意見であるとしながらも半ば認めているところが違和感を覚えました・・・。 なぜって、アカシャ本人が王女として戦争と虐殺を行っていることですでに自己矛盾してるし(w

あとがきを読んで知りましたが、著者のアン・ライスは愛娘を亡くし、アルコール依存症になったところから、乗り越えて作家人生を歩んでいるそうです。 

「世の中には人の力ではどうすることもできない暗黒があり、いったんそれに捉えられてしまうと、それはそう簡単には人生から去ってはくれない。 けれど、人はやがて暗黒のなかでどうやって光を見出せばいいかを学ぶようになる。 そうなったとき、その人は光しか知らない他の人々の知ることのできない真実を理解できるようになるのだ。」とインタビューで答えているそうです。 確かにそのようなテーマがこの作品から読み取れるように感じました。

ヴァンパイア・クロニクルシリーズで始めに読んだのは、5作目の「悪魔メムノック」なのですが、まだ紹介できるのは先ですね・・・。 

そういえば、この「呪われし者の女王」は映画化されているのです。 「クイーン オブ ザ ヴァンパイア」という作品ですが、日本ではあまり話題になってませんよね? なんとなくDVD買っていたりするので、いずれDVDの紹介も書こうかと思ってます。

関連リンク(ブログ内)

14冊目 ヴァンパイア・レスタト

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呪われし者の女王(上)

呪われし者の女王(下)

DVD クイーンオブザヴァンパイア

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2007年2月17日 (土)

19冊目 華麗なる一族

山崎豊子の「華麗なる一族」を人から薦められて読んだのは1年以上前でしょうか。 今はテレビドラマにもなって話題になってますし、今回はこの作品を取り上げたいと思います。

評価:星4つ ★★★★ 

山崎豊子といえば、「白い巨塔」で有名ですが、ウィキペディアから引用すれば、「社会の暗部を鋭くえぐった小説として評価を得ている一方、フィクションに実話を織り込む手法は激しい批判を浴び、また盗作疑惑もささやかれている」そうです。 いずれにしても、本作品は金融に興味のない人でも楽しめるのではないかと思います。

物語は志摩半島の英虞(あご)湾の側にある志摩観光ホテルのダイニング・ルームから優雅に始まる。 シャンデリアや金屏風、新年の装いをした華やかな人々・・・。その中でも際立っているのが、この物語の中心となる、阪神銀行の頭取万俵大介とその一族です。

最初の会話からフランス語で始まり、内容から見てもセレブな、まさに「華麗なる」と証するに相応しい一族。 阪神銀行を中核として鉄鋼・不動産など一大財閥を築き、妻は公家の血を引き、長男は阪神特殊製鋼の専務で大物議員を叔父に持つ。 長女は大蔵省の有望なキャリアに嫁いでいる。 話が進むにつれ、さらに一族は閨閥を広げていき、総理大臣の親族まで取り込もうとします。

一方で銀行の方は、大介は都市銀行唯一のオーナー頭取として、銀行大合併の激しい生き残りをかけた争いを、築いてきた閨閥と策略で切り抜けていきます。

そんな華やかな面とは裏腹に、一族の暗く歪んだ部分の象徴ともいえる存在が高須相子で、もともとは子供の家庭教師として雇われたのに、今では正妻の寧子(やすこ)と交代で大介と同衾(どうきん)し、子供の結婚相手も一切取り仕切るようにまでなっている。

さらに、大介と長男鉄平の確執、次男銀平のトラウマ、閨閥結婚の不幸と、鉄平の生きがいと言える阪神特殊製鋼の危機が相まって悲劇が訪れます。

この作品は、実在した神戸銀行や岡崎財閥、山陽特殊鉄鋼などをモデルにしたと言われています。 それだけに物語の内容が現実味を帯びており、財閥一族の内情や銀行の生き残りをかけた戦いなどの描写に、読んでいて引き込まれるような魅力があります。

作品中、万博開催のための土地買収で巨額のお金を手に入れる農家などに対し、預金獲得の銀行間の戦いの中、頭取に期待されて過大な目標を立ててしまった支店長らが農家の田植えの手伝いまでしているシーンが印象的でした。

他にも、護送船団方式の時代ならではのMOF担(大蔵省担当)や情報集める忍者のような銀行員など、バブルがはじける前の金融行政の一端が描かれ、なんだか戦国時代の物語のようだな・・と思ってしまったり。

ラストの、それぞれの人の行く末と更なる銀行間の争いの予感なども感慨深いものがあります。

上・中・下巻と3巻の長編ですが、一気に読みきってしまうほど面白かったです。 テレビドラマで興味を持った人も、原作を読んでみてはいかがでしょうか?

ドラマもいよいよ最終回ですね。木村卓也が演じているからか原作より鉄平サイドの物語になってるような・・・。

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2007年2月 5日 (月)

18冊目 長いお別れ

ハードボイルドでお薦めの本は? と聞かれたら、迷わずレイモンド・チャンドラーの作品を挙げるでしょう。 「長いお別れ」(The Long Goodbye)はその代表作で、1954年に発表された長編です。

評価:星5つ ★★★★★

最初に読んだときは高校生の頃でしょうか、他に読みたい本がかなりあってさっと読んでしまって、この作品の味わい深さを分からないままでした。 その後「さらばいとしき女よ」や「高い窓」などを読んで気になり、読み返し、今回感想書くために読んで3回目となります。

あらすじですが、主人公で私立探偵のフィリップ・マーロウは、ひょんなことから、酔っ払って女に置き去りにされたテリー・レノックスを助ける。 これが元で何回か飲む仲間になるのだが、ある日事件に巻き込まれた風のテリーを空港まで送ったが、何日か後に彼がメキシコで自殺したことを知る。

妻殺しの犯人として自白の手紙も残されるが、マーロウにはテリーが犯人と信じられない。 しかも新聞でもあまり話題とならず、マーロウにはこれ以上事件に介入しないように圧力が加えられる。 テリーの死後、その死の直前に書かれたと思われる手紙が届き、中には20ドル紙幣と、バーでギムレットを飲んでテリー・レノックスの全てを忘れて欲しいとの言葉が遺されていた。

その後、アルコール中毒で行方不明の作家を探すという依頼を受けることになったマーロウ。 冒頭の事件とは一見何も関係もないと思われたが・・・・・。

作品の文章は奥が深く、よく読まないと登場人物の台詞の背景が分からないところもあります。 マーロウの皮肉っぽい台詞に思わずニヤリとしてしまいます。

主人公のマーロウはしがない私立探偵ですが、男としての確固たる信念というか、スタイルがあって、易きに流れず、あえて棹差す生き方をしますが、そんなところがマーロウの魅力なんでしょうね。 権力や暴力に臆せず、むしろそういう相手にこそ不遜な態度をとる一方、まったく得にもならないのに人を助けたり、妙に義理堅いところがあって、ハードボイルドという言葉がぴったり合う探偵だと思います。

今作ではマーローウ、ほとんどただ働きです・・・お金が入るチャンスはあったのに・・。 また、最後で2人の人間に「さよなら」を言いますが、ちょっと哀愁が漂います。 自分の生き方を変えてまで人と付き合えないということかな・・・。

推理小説・ミステリファンならば絶対にはずせない作品だと思いますし、そうでない人にもお薦めです。 題名の「長いお別れ」という言葉、そしてこの小説で有名な台詞「ギムレットにはまだ早いね」の深い意味を読み取れるまで読んでください・・・。

ちなみにギムレットとはジンベースのカクテルで、この作品では「本当のギムレットはジンとローズのライム・ジュースを半分ずつ、ほかは何も入れない」のだそうです。 ネットで調べると、名前のギムレットの由来はコルクスクリューに似た形をした大工道具の一種で、今はフレッシュライムジュースを使った辛口が主流だそうです。

「ギムレットにはまだ早いね」の意味は難しいですよね。 これも誰かが言っていたのですが、テリーとのことがいい思い出となって、昔を思い返すようにバーでギムレットを飲めるようになるには早すぎたという意味とか・・・。

貴方の解釈はどうですか?

追記しますと、今月(19年3月)ハヤカワ書房から、村上春樹の翻訳で「ロング・グッドバイ」として新たに販売されるみたいですね。 おそらくハードカバーではないのに2,000円ってのは、ちょっと高めかと思いますが、またレンモンド・チャンドラーが有名になるかも・・。

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カクテルバーMIXINGDRINKS ・・・ギムレットについて

こちら今月発売予定の「ロング・グッドバイ」

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2007年1月28日 (日)

17冊目 真実の剣シリーズ「魔教の黙示」4

真実の剣シリーズ「魔教の黙示」の4巻目-希望の消えた町-(テリーグッドカインド)を最近読み終わりましたので、感想などを・・・。

評価:星4つ ★★★★ (なんかアマゾンに変わって画像が小さくなりましたね・・)

「魔教の黙示」の1巻でようやく回復したカーランでしたが、闇の信徒で「死の女主人」と呼ばれているニッキに呪文をかけられ、カーランの生殺与奪はニッキに握られてしまいます。 そのニッキリチャードを脅迫して言ったことが、自分を妻として魔法は一切使わずに守ること・・・。

何を考えているのか分からないニッキに連れられ、二人は旧世界を旅し、ようやくジャガンの故郷へたどり着きます。

ここからが4巻の話になる訳ですが、話として本筋と違う、しかもダーラの王にまでなったリチャードが惨めに農民出身として暮らしていく陰鬱な話しかと思って読んでいたのですが、意外なことに至高秩序団の綻びが見えてきて、絶体絶命(毎回のことですが・・)の新世界を救える一筋の光が見えてきた感じです。

しかし、至高秩序団のやり方・・・すべての人が公平に、働く人もそうでない人も・・・って、社会主義の悪い部分を取り出しているんでしょうか? ニッキリチャードはその弊害を目の当たりにします。

ニッキにしてみれば、リチャードに至高秩序団の素晴らしさを知って欲しかったのでしょうが、現実は厳しく、住民の暮らしは貧困と怠惰にまみれています。 せっかく作られた材料・原料なども公平という概念で必要なところに分配されにくくなっています。 なんか、崩壊前のソ連で食料が足りない人がいる一方で、大量のジャガイモなどが供給されないまま腐るに任されている現場のテレビの報道を思い出してしまいました。

そんな中、リチャードは逆境にめげずに周りを改善していきます。 自分の求めるものではなく、相手の求めるもので交渉していくことが大事ということでしょうか。 2・3巻ではカーラン側での戦争のシーンに光が当てられ、リチャードの話は退屈なものでしたが、今回は割りと読ませるものになっています。

建設中のジャガンの宮殿に隠された秘密があることも分かり、魔道士(ウイザード)と別に、呪術士(ソーサラー)が存在するということも語られます。

巻の最後ではまたリチャードがピンチに! ニッキの恋はどうなってしまうのか!(笑

次回も楽しみです。

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10冊目 魔道士の掟

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2007年1月 7日 (日)

16冊目 魔術師の夜

刑事マロリーのシリーズ最新刊(とはいっても読んでから1年経っているのですが)を今回はご紹介します。 上・下巻2冊構成となっています。

評価:星4つ ★★★★

題名からも想像できるように、今回は被害者、容疑者共にマジシャンという設定です。 加えてマロリーシリーズで何度も名前が出ている伝説のマジシャン、マックス・キャンドルマラカイの過去も詳しく語られ、今まで張られていた複線が明るみに出た、という感じです。

あらすじは、マックス・キャンドルの遺した「失われたイリュージョン」を仲間のマジシャンが再現しようと、TVの前で3つのクロスボウから発射される矢をかわすマジックを実行します。 ところが、何かトラブルがありマジシャンは矢に貫かれて死んでしまいます。

事故の可能性が残る中、マロリー(いつものとおり)独自に捜査を始めますが、関係者はマジシャンばかり。 今までと違って一筋縄ではいきません。 一度ならずも罠にかけられ、TVからも名指しで批判され一時は捜査を止められてしまいます。

登場するマジシャンの中でも最も注目されるのが、今までも話では出てきたマラカイです。 記憶障害の病を持ちながらも未だ他のマジシャンとは一線を画す一流の腕前。 昔死んだ妻を未だ生きているかのように魅せる魔術、「ルイーザのコンツェルト」。

ポーカーに死んだ妻を参戦させ、誰もいないはずの席から投げられるチップ、そしていつの間にか灰皿に火がつき口紅のついたタバコが出現。 後半で拳銃を持ったマロリーと正面から対峙して鮮やかに切り抜ける手口。 実際にやるとするとかなり苦しいものもありますが、トリックどうこうより、綿密な準備と人の心理を巧みに利用したマラカイの手並みはまさに一流と言わざるを得ません。 

病のせいもあってちょっと狂っている面もありますが、端正で紳士的で腕は一流。 マジックをやる人ならば、一度はこんなマジシャンになってみたいと思うのではないでしょうか?

この話は、犯人が誰かということよりも、マロリーマラカイの戦い、そして恋愛(?)の物語といってもいいでしょう。 現在の殺人を解明するために過去、第2次大戦中まで話は遡ります。 果たしてルイーザの死の真相はどのようなものだったのでしょうか? そしてチャールズの恋の行方は?(笑)

最後、犯人に対するマロリーの冷酷な復讐がなんとも印象的でした。 マロリーシリーズを読んだ人はもちろん、マジックに興味を持つ人にもお薦めしたい作品です!

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7冊目 氷の天使

1冊目 クリスマスに少女は還る

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2007年1月 6日 (土)

15冊目 チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷

塩野七生著、「チェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」を紹介します。 昔、この本を読んで歴史小説にも興味を持ちました。

評価:星4つ ★★★★

塩野七生は、「ルネサンスの女たち」で作家デビューを果たし、本作をはじめ、歴史小説を多数執筆しています。 「ローマ人の物語」などは書店でもよく見かけます。 私は塩野七生の本をそれほど読んでいるわけではありませんが、このチェーザレ・ボルジアあるいは優雅なる冷酷」はかなり面白かったです。 これがきっかけで藤本ひとみやクリスチャン・ジャックなど、古代から中世の歴史小説を読む楽しみを覚えてしまいました。

チェーザレはイタリア、ルネサンス期の人物で、法王ロドリーゴを父として枢機卿になった後、自ら緋の衣を脱ぎ捨て、各地を征服する覇者となり、享年31歳という短くも激動の人生を送ります。

ボルジア家といば、やはり毒薬使いで陰謀好きというイメージがあると思いますし、実際チェーザレも無慈悲なのですが、この本では史実に基づき第三者視点でチェーザレを描きながらもその魅力を引き出しています。

あとがきにもあるように、塩野七生「悪名高きボルジア家」として定着したイメージを覆したいと思いこの本を書いたのでしょう。

また、「君主論」で有名なマキャベリレオナルドダヴィンチといった偉人たちと同時代に生き、マキャベリをして絶賛させたチェーザレ・ボルジアの政治力・行動力は読んでいて舌を巻くものがあります。

そして絶頂からの不運の連続、失策・・・最期。 他の歴史小説と違って淡々と語られますが、かえってチェーザレに対して興味を惹かれました。

「めったにしゃべらない、しかし常に行動している男」

イタリアの歴史を題材にした小説は他にもありますが、どれも面白いです。ぜひ、一読を!

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2006年12月17日 (日)

14冊目 ヴァンパイア・レスタト

ゴシック小説の女王アン・ライス著の「ヴァンパイア・レスタト」を紹介します。 これほどまでにヴァンパイアを丁寧に、そして魅力的に!描いた作品は他に見たことがありません。

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評価:星5つ ★★★★★

ヴァンパイア・レスタト」はヴァンパイアクロニクルシリーズの一つで、前作にあたる「夜明けのヴァンパイア」の続編ですが、こちらから読んだほうがいいかも。 「夜明けのヴァンパイア」は映画化された「インタビューウィズヴァンパイア」の名前のほうが有名かもしれません。

インタビューウィズヴァンパイア」を始めて見たときは、まだ原作を読んでいなかったので、特に面白くもない映画・・という印象でした。 しかし、原作を読んでから見ると、トムクルーズの演技といい、原作の魅力がとてもうまく表現されていることに気づきます。 ぜひ、原作を読んでから映画を見ることをお薦めします。

わき道にそれましたが、「ヴァンパイア・レスタト」では、「夜明けのヴァンパイア」で貶められていたレスタトが主人公というか、レスタト自身が書いたという設定で、現代の世界に久しぶりに目覚めたレスタトがロックバンド(!)でスターを目指そうとするところから始まります。

このあらすじだけ読むと一見ライトノベルのような軽い話かと思うかもしれません。 ところが、ストーリーは重厚で色々な思想が語られ、見る間にレスタトの究極のヴァンパイアへ続く壮大な冒険に引き込まれてしまうことでしょう。 少し男性同士の愛みたいな雰囲気もありますが・・・・まあ、人間じゃないし。

物語はレスタトがまだ人間の頃、落ちぶれた地方の領主の放蕩息子だったレスタトがどのようにしてヴァンパイアとなったのか、そしてヴァンパイアはどのようなものなのか、「闇の賜物」、「悪魔の道」について語られます。

意に反してヴァンパイアとなったレスタトがヴァンパイアの起源を求めて、何百年と生きているヴァンパイアの間でも伝説となっている歳を経たヴァンパイアたちを探したこと、そこで全てのヴァンパイアの始祖である「護られるべき者」を見たこと。

レスタトはその冒険の過程でとてつもない力を持つヴァンパイアとなりますが、その後前作である「夜明けのヴァンパイア」からの一連の出来事で失意とともに永い眠りへとつきます。

そして本作の冒頭の部分へ話が戻ってきます。 なぜロックスターを目指すのか。 闇の生物として今まで人間に知られることなく生きてきたヴァンパイア全ての謎を人間たちに明かし、自らがテレビカメラの前に出る行為は、他の全てのヴァンパイアに対する挑戦でもあり、また、人間に対しても宣戦布告をしていると言えます。 いずれにしても、レスタトは無鉄砲で限界を知らない強烈な生き方をします。

この無鉄砲さで好き嫌いが分かれるかもしれません。 でも、いつの時代も閉塞した古い世界を破壊して停滞から新たな時代を生み出すのは、レスタトのような熱い情熱と不屈の精神ではないでしょうか?

その顛末はどうなるのでしょうか? そして第2部「呪われし者の女王」へと話は受け継がれます。 ダークファンタジー系が好きな人にはかなりお薦めします。 久々に読み直しましたが、一気に読んでしまいました(w

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20冊目 呪われし者の女王

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「ヴァンパイア・レスタト」上

「ヴァンパイア・レスタト」下

第2部「呪われし者の女王」もお薦め!

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2006年12月10日 (日)

13冊目 紅衣の公子コルム

マイケル・ムアコック著のエターナルチャンピオンシリーズの一つ、「紅衣の公子コルム」、今回はその第1部である「剣の騎士」、「剣の女王」、「剣の王」の3冊を紹介します。

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評価:星5つ ★★★★★

(絵柄的に3巻目が良かったので「剣の王」を張りました・・。)

コルムの物語は第1部と第2部ではまったく違った話となっています。 第2部では違う時代に召還され、そこでの冒険となるのです。 第2部までの全6巻を見ればコルムは、四英雄(エルリック、エレコーゼ、ホークムーン、コルム)の中で最も悲惨な結末を迎えるヒーローです(w エルリックより酷い最期だなーと個人的に思うのですが、どうでしょう?

前半でコルムは、「コルム・ジャエレン・イルゼイ」と呼ばれ、後半では「コルム・ルロウ・エレイント」と呼ばれます(意味は本を読んでください・・)。

とはいえ、第1部はめずらしく(?)ハッピーエンドを迎えます。 第1部は、コルムの生まれた世界の話。 ヴァドハーというエルフのような種族に生まれたコルムですが、ヴァドハーを怨むマブデン(人間のこと)たちが出現し、家族を含めコルム以外の一族は虐殺されてしまいます。

コルム自身も敵の拷問を受け片眼と片腕を失います・・・(うーん、やっぱり悲惨だな・・)。  辛くも生きながらえたコルムは味方に出会ったり、再び一族の仇と戦ったりしながら古代の魔術師の島で神々の体の一部、「クゥイルの手」と「リンの眼」を生体移植されます。 これらが3部作でコルムの超自然の武器となります。

リンの眼」は地獄の奥底「リンボ界」を覗き見、「クゥイルの手」は「リンボ界」にいる死人を呼び寄せ従わせます。 言わば召還術なのですが、呼び出す者たちは直近で殺した敵というのが珍しいというか、呪わしい設定ですね・・。

このような武器と旅で仲間になるものたちとコルムは戦っていくのですが、マブデンたちの背後で糸を引いていたのは、混沌の神々であったことが分かるのです。

第1巻では地獄の大公アリオッチ、第2巻ではキシオムバーグ、第3巻ではマベロードと、強大な神々を敵に回して戦うこの3部作は結構好きです。 最後もハッピーエンドを迎えるし・・・(ハッピーエンドは納得いかないという人もいるのかもしれませんが・・)

1巻のアリオッチとの戦いも単純に戦闘するのではなく、幾重にも張られた罠と偽りで絶体絶命の危機に陥ったりと、ストーリーがよく練られていて、全体的にエルリックサーガエレコーゼサーガなどよりまとまりのある物語に仕上がっています。 中盤でのシュール・アン・ジヴァンという妖術師とのやりとりも面白いですね。

また、1巻の序章で物語の導入が語られますが、ここの表現はかなり気に入っています。 しかるに<人間>は、不安の奴隷でありながら、無知ゆえに傲慢な態度で、よろよろと前進を続けた。あきらかにちっぽけな己の野心がひき起こした巨大な崩壊が見えなかったのだ~<人間>を創造することにより、宇宙は古い種の生物たちを裏切ってしまった。」 ムアコックはこの時期とても人間嫌いな時期だったんでしょうか?

第2巻「剣の女王」では、ジャリー・ア・コネルという、英雄の介添人が登場し、コルムが永遠の戦士の一人であることを告げます。 そして混沌に仕えるマブデンと混沌の神キシオムバーグの援軍が攻めてくることが判明するのです。 まったく勝ち目のない戦いを前に、強力な同盟者がいることを知りますが、同盟者はキシオムバーグが支配する次元にいるという。 コルムたちは同盟者と見つけることができるのでしょうか?  あ、忘れるところでした、呪われし運命のゲイナーも登場します。 記憶が定かではないですが、薔薇の復讐にもでてきましたよね・・? 混沌に服従させられている元永遠の戦士です。

第3巻では、前回平和が戻ったように見えたのもつかの間、コルムの宿敵であるグランディスが混沌の神マベロードの助力を得て攻撃を仕掛けてきます。 なんとか逃げ切ったものの、妻であるラリーナとはぐれ、他の次元を彷徨うことになるのです。 ここでエルリック・エレコーゼなど他の永遠の戦士と運命が重なり合ったり、永遠の都市タネローンを求めたりしながら、混沌を倒す方法を探します。 ここで物語りはいったん終わりますので、クウィルの手やリンの眼の謎なども全て明かされ、一応の大団円を迎えます。

今ではなかなか本を手に入れにくい状況ですが、マイケル・ムアコックの作品が気に入った人ならば、古本屋で探してでも読む価値のある作品です! ホークムーンが新版で出てるのだから、コルムシリーズもぜひ出して欲しいですね~。

(追記) あれから月日も流れ・・・ついにコルムシリーズも書店にならびましたね! 今は「雄牛と槍」の題名で後半の三部作が1冊になって出ています。 後半はまったく異なる話になりますが、自分的には四英雄中で最も悲惨な結末と言えるコルムの物語、ぜひ読んでみてください(w

関連リンク(ブログ内) 

3冊目 エルリックサーガ 「メルニボネの皇子」

11冊目 ストームブリンガー

25冊目 エレコーゼサーガ「剣の中の竜」

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はてなでの検索結果

剣の騎士(新版、旧版の1~3巻に相当)

雄牛と槍(新版、旧版の4~6巻に相当)

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2006年11月23日 (木)

12冊目 すべてがFになる

森博嗣のミステリーを読んだことはありますか? 今回は森氏の作品の中でも有名なS&M(犀川&萌絵)シリーズの第1巻となる「すべてがFになる」を紹介します。

評価:星4つ ★★★★

大学の工学部助教授の犀川は、教え子の西之園 萌絵(にしのそのもえ)らゼミのメンバーと、孤島にキャンプにやって来た。 この島には研究所があり、そこには世界的に有名な天才プログラマー、真賀田 四季博士がいるのだが、14の時に両親を殺害して以来、研究所の一角に閉じこもり、面会謝絶となっている。

しかし、犀川たちが博士の部屋の前に来たとき、部屋の扉が開き、中からウエディングドレスを着た博士の死体が発見される! 部屋に残されたコンピュータのモニターには「すべてがFになる」とのメッセージだけが残されていた・・・・完全な密室で博士を殺した者とは? そして、何を意図しているのか? 

私は普段からあまり日本人作家のミステリーはあまり読まないのですが、このシリーズは結構気に入ってかなり読んでいます。 「理系ミステリ」と評されることが多いですが、確かに数学やコンピューター、建築工学などの話題が良く出てきます。 しかし、それよりも登場人物の考え方がかなり独特なのです。 

考え方が理系というか・・・人間性を排除したその思想は、なるほど、と思えるものもあれば、受け入れがたいものもあって、色々と刺激を受け、読んでいると自分の思考も研ぎ澄まされる感じがします(大袈裟かな・・?) 。

また、パソコンやウイルスの話が出てきますが、今でこそ常識といってもいいですが、作品が書かれたのが10年位前ということを考えると、先進的だったのかも。 コンピューターウイルスは生物なのか?なんて、面白い話題ですね。 生命を定義することは意外と難しいようです。

登場人物ですが、主人公の萌絵は幼い頃亡くした両親から遺産を継ぐとともに、一族も県警のトップや県知事夫人である、言わばお嬢様ですが、謎解きが好きで世間知らずですが行動力があります。 計算力に優れていて、冒頭でも「165×3367は?」と聞かれて、すぐに暗算してしまうほどです。 推理もランダムに色々なパターンを演算していく方式・・・導かれる結論はいまいちのことが多いですが・・。

萌絵の指導教官、犀川は探偵役をこなしますが、少しクールで独特の考えの持ち主です。 普段はあまりすごい人には思えないのですが、建築工学を専門としていながら、頭脳明晰で鋭い推理で事件の謎を解きます。 もしかすると、作者がこうありたいと思う姿なのかもしれませんね。

そして本作に出てくる世界的な天才と称される、真賀田 四季も存在感があります。 真賀田 四季が主人公のシリーズも別に出ているくらい人気があるようです。

私自身、森ミステリで始めて手に取ったのはS&Mシリーズ10作目「有限と微小のパン」でした・・・。 まあ、こちらを先に読んだので、本作での真賀田 四季はちょっと稚拙な印象を受けるし、まだまだ物語全体が粗削りな感じがします。 

それでもこの後に続く作品への期待感を高めるのに十分な面白さがあります。 なんと言ってもこのタイトルのつけ方がうまいですね。 個人的にはトリックより、登場人物の台詞を借りて語られる思想などが好きなんですが。

本格ミステリや定番のストーリーにはない独特の読後感が味わえます、読んでいない人はぜひ一度手に取ってください!

第2巻 「冷たい密室と博士たち」

シリーズ最終巻(10巻)「有限と微小のパン」

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2006年11月12日 (日)

11冊目 ストームブリンガー

エルリックサーガ第6巻(新版では4巻)にあたる本作(マイケル・ムアコック著)は、最終話が収められています。 「メルニボネの皇子」でまだエルリックサーガを語り足りなかったので新設しました(w

評価:星5つ ★★★★★

エルリックサーガ最終章に相応しい、壮大なストーリーとなっています。 

5巻「黒き剣の呪い」でザロジニアを妻として娶り、辺境の王国カーラークにようやく愛と平安を手に入れたエルリック。 呪われた剣、ストームブリンガーを最後海へ捨てたのですが、剣はひとりでにカーラークの武器庫に戻ってきています。

物語の冒頭で、混沌の手先がエルリックの元へ送り込まれ、最愛の妻ザロジニアが誘拐されてしまいます。 黒魔術で敵の死体から情報を得たエルリックは、再び武器庫に保管されている魔剣ストームブリンガーを手に取り、戦いへと乗り出していきます。

今までよりかなりの強敵がつぎつぎ現れます。 なにせ、神々と戦うんですから・・。 そして、エルリックの宿敵となるパン・タンの神官ジャグリーン・ラーンもなかなかの強敵です。 混沌の神々から恩恵を受けているので、ストームブリンガーの恐るべき攻撃もかわしてしまうのです。

混沌が勢力を伸ばす中、エルリックを助けるのが、セピリズが代表する「十者」と呼ばれる「運命(フェイト)」に仕える者たちで、助言を与え、1巻から姿を消していたストームブリンガーの片割れの魔剣、モーンブレイドを授けます。

モーンブレイドはエルリックの同胞、ディビム・スロームが持つのですが、この2本の剣は凄まじい力を発揮します。 そして、ストームブリンガーの秘密が語られ、この剣の無数の兄弟たちに助けを呼ぶ呪文も伝えられるのです。 さらに後半、混沌の盾という、究極の盾も手に入れます。片手にストームブリンガー、もう片手に混沌の盾を装備してまさに無敵状態に(w

ジャグリーン・ラーンが呼び出した地獄の公爵たちの圧倒的な力にエルリックは立ち向かえるのでしょうか? 公爵の中には、メルニボネ人が崇めてきた、今までエルリックの守護魔人であったアリオッチすら含まれるのです!

混沌の影響で大地はうねり、変化の波に飲まれると人も物も永久に姿かたちを歪められてしまい、まさに世界の終末のようになっていきます。 最愛の妻ザロジニアを一度は取り戻すものの、その後あまりに悲惨な運命が待っています。 結局、エルリックら永遠の戦士にとって休息は一時のものなんでしょうね・・・ザロジニアは、恋敵であるストームブリンガーに負けたとも言えるかも・・。

登場人物も満足できるものがあります。 親友、ムーングラムはもちろん、赤き射手ラッキール、竜洞の支配者ディビム・スロームがともに戦い、終盤では竜や法の神々も登場します。 ラストに相応しい豪華キャストですね。

ラストは当然ハッピーエンドではありません(w しかし、バッドエンドとも言えない・・・ある意味では勝利とも呼べるかもしれません。 でも、エルリックサーガのファンであれば納得できるのではないでしょうか? 古い時代から新しい時代へ、混沌と法のバランス・・・ストームブリンガーの真の姿は謎のままです(エレコーゼサーガ第3巻「剣の中の竜」で少し語られます)。

「ストームブリンガー」での基本思想は、今でこそありふれたものかもしれませんが、法(ロー)と混沌(カオス)の均衡です。 「法」は秩序をもたらしますが、同時に停滞を招きます。「混沌」は変化と無限の可能性を与えますが、混乱や無秩序をもたらします。 両者がバランスよく釣り合ってこそ(ある程度法の側に偏って)、世界がうまく成り立つ。

また、宇宙は基本的に不公平なもので、人間はその中で自ら秩序を打ち立てていかなければならない。 平和は与えられるものではない。 そんなメッセージが込められているように感じます。 本書を最後まで読んだ人ならば、もしかすると、今の世界があるのはエルリック達の尊い犠牲のおかげかもしれないと感じるでしょう(あくまでお話と割り切ればそれまでですけど・・)。

個人的に、ラストの壮大な戦いに合う曲として、ショスタコービッチの交響曲第5番ニ短調作品47「革命」第4楽章を聞きながら読んでみたりしてます。 壮大でありながらどこか悲壮な感じの曲がストーリにマッチしてると思うのですが・・・・将来映画化されることがあれば、使ってほしいです(w

ここで、今販売されている新版の方ですが・・・。カバー絵が天野喜孝でないのはしょうがないとして、なんでしょう?物語の順番がちょっと変な気が・・旧版の初めのほうに出てきたショートストーリーの冒険が突如でてきて、旧版に慣れた私はちょっと・・・。 そして!これが一番感じましたが、「アリオッホ」ってなんですか?なんかすごくかっこ悪いんですけど・・・地獄の大公は「アリオッチ」でしょうが!と言いたい・・・せめて、「アリオク」程度にでもしてくれれば・・・。

最後に、ある意味エルリックより有名となった魔剣ストームブリンガーについての描写をすこし書きます。

黒い大剣からやわらかな呻きが発せられた。それは重く、完璧なバランスを保った、両手使いの長大な広刃の剣で、柄は横に長く、刃はなめらかに幅広く、柄から切っ先までは5フィート以上もあった。柄近くには神秘のルーン文字が刻まれ、エルリックでさえ、その意味が完全にわかるとは言えなかった。」 こんな剣だそうです。 6巻の最初に、天野喜孝のカラーの挿絵に描かれている剣こそ、私のイメージしているストームブリンガーです。

またも、お前を使わなねばならぬか、ストームブリンガー」 エルリックは続けて言います。 「いまこそ、われらは、死以外に分かつものがないほどの絆で結ばれている、と言わねばなるまい」 と。

強大な力を持ち、使い手に魔界の活力を与えるものの、時には使い手の意思に反して人を殺す剣。 敗戦後、一緒に戦った仲間がいつのまにか見当たらなくてエルリックは聞きます。 「「気がつかなかったのか?」 「気がつく、何に?」 「ジャグリーン・ラーンの旗艦に乗りうつって、おぬしが主甲板へ行こうと切りまくっていたときだ。そのときのことさ、おぬし、自分のやったこと ― というか、おぬしの呪われた剣のやったことを知らんのか」 エルリックの全身にどっと疲労がこみ上げた。 「いや。わたしは ― わたしの剣は ― かれを殺したのか?」

半ば憎しみながらも持ち続けなければならない魔剣。 敵に対する容赦ない復讐と失っていく友情・愛情・・そんな陰鬱なところもなぜか惹きつけられる作品なんですよね・・。

読んでいない方は、ぜひ1巻、「メルニボネの皇子」から読んでみてください。

あと、エルリックサーガに登場する人物の辞典をHPに作っている方がいました。 かなりマニアックです(w こちら、そろりんさんのHPへのリンク ブログもあるようです。

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25冊目 エレコーゼサーガ「剣の中の竜」

13冊目 紅衣の公子コルム

3冊目 エルリックサーガ 「メルニボネの皇子」

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こちら、第3巻

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2006年11月 9日 (木)

10冊目 魔道士の掟

真実の剣シリーズの第一編「魔道士の掟」テリー・グッドカインド著 を紹介します。 最新刊は今年10月発売の「魔教の黙示 3 戦争と結婚」で、すでに29巻くらいでています。

評価:星4つ ★★★★

星4つという評価は作品全体に対してです。「魔道士の掟」(文庫全5巻)への評価は星5つにしてもいいかな、と思っています。 ロバート・ジョーダン著の「時の車輪」シリーズと並んで世界中で売れている本格ファンタジー小説です。

ストーリーは、森の案内人であった主人公リチャードが、偶然ひとりの女性を救ったことから全世界を恐怖で支配しようとしているダークン・ラールを倒す使命を負う事になっていくというファンタジーではお馴染の展開ですが、色々な意味で個性的な物語となっています。

剣と魔法のお馴染の展開も独特の味付けがなされ、面白いのですが何より、そこに描かれる人間の生き方、考え方が強烈に描かれているのです。

たとえば、リチャードは突然「探求者」という称号を与えられますが、探求者は真実のみを追い求め、独力で勝利を得なければなりません。かつて、探求者の発したたった一つの質問で一国の王が震え上がったとさえ言われるほどの力をもつ存在なのです。

リチャードもそんな探求者としての素質の片鱗を1巻から示していくのですが、確かに読んでいてハッとさせられる見事な質問を投げかけています。言葉が剣や魔法より力を持つ瞬間・・。現実の世界でも、質問の仕方ひとつで状況が変わることってありますよね。 特に4巻でのリチャードが老魔道士に発した質問には感心させられました・・・日常でも使えそうですね・・。

そしてもうひとつ、この編の題名でもある「魔道士の掟」ってやつです。 4巻で最初の「魔道士の掟、その1」が登場します。(本を読む前に見たくない方もいるでしょうから、伏せておきます。読みたい人は「」の間をドラッグして反転させてください。) それは、「人は愚かなものであると心得よ」というものです。

これだけではいまいち意味が分かりませんが、「人は愚かなものであり、それを信じたいがゆえに、あるいはそれが真実であることを恐れるがゆえに、嘘を信じてしまう」という意味だそうです。これはとても深い言葉ですし、この掟を応用することにより人々を都合のいいように操ってしまうことすらできてしまいます。 これは物語の世界だけの話ではなく、現実の世界でも往々にしてあることなので、考えさせられました。

ファンタジーは寓話として、現実世界へのメッセージや教訓を分かりやすく伝えてくれますが、この作品も色々な面で作者の伝えたいメッセージがこめられているのです。

最新刊である「魔教の黙示 3 戦争と結婚」ではついに掟その6が登場しました。うーん、この頃になるとリチャードの立場もずいぶん変わっていて、魔道士の掟なんて半分忘れてました・・・掟その5とか4など記憶に残ってないので、一覧表でも作って欲しいくらいです(w

さらに、このシリーズの魅力というか、特徴ですが、いつも主人公が絶体絶命で勝つことが不可能な状況に追い込まれ、みごと(もしくは辛くも)逆境から抜け出すストーリーとなっていることです。

生半可な危機ではなくて、本当に絶望とも言える設定です・・・毎回・・・著者は相当のSだなあ・・・と読まれた人は思うはず(w 魔法の世界なので予言も度々出てきて重要な役割を果たしますが、その内容も最も信頼している仲間(時にはヒロインから!)裏切られて致命的な攻撃を受けるように予言されることもあったりします。 

まあ、そこは物語が進むと予言の本当の意味が明らかになるのですが、まったく毎回よくこんな逆転不可能な立場に追い込むなあ・・と。主人公とヒロインは美男美女で類まれなる能力をもっていますが、ちっとも羨ましくないです(w

剣と魔法と作者の強い思いが込められたこのシリーズ、ぜひお薦めします! (今回久しぶりに5冊全部読み返したので、感想書くのに時間かかってしまった・・・)

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17冊目 真実の剣シリーズ「魔教の黙示」4

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真実の剣シリーズ~魔道士の掟~

第1巻 探求者の誓い

 魔法とは無縁に暮らしていたリチャードと魔法の国から来たカーランとの運命的な出会い。彼女の使命はダークン・ラールの野望を命に代えても阻止すること。その絶望的な使命が果たされなければ、全人類はダークン・ラールの奴隷になってしまうとういう!

第2巻 魔法の地へ

 魔道士から探求者に任命されたリチャードは、ヒロインであるカーランと共に死者の世界に通じる魔法の境を通り抜けなければならない!彼らは境を越え、ミッドランズへたどり着くことができるのか?

第3巻 裏切りの予言

 ミッドランズの辺境に住む排他的な部族、泥の民。情報を得るために、リチャードは彼らから信頼を勝ち得なければならない!それは、順調に進んだかに見えたが、ひと波乱起きます。そして、魔女より恐ろしい予言がもたらされます。

第4巻 結ばれぬ宿命

 ついに、カーランの正体と聴罪師長という称号の意味が明かされる。それは、彼女とは絶対に結ばれぬ運命を意味していた・・・。ダークン・ラールが求める魔法の箱を隠してきた魔道士ギラーの最期の賭けとは?そして、すべてがうまくいったかに思えたとき、リチャードは人格を変えられるほどの絶体絶命の窮地に追い込まれる!

第5巻 白く輝く剣

 ついに魔道士の掟編のクライマックス!ダークン・ラールに捕われたリチャードの運命は?魔女ショータの恐るべき予言がついに現実のものとなり、全ての望みはなくなったかに見えたが・・・。

最新刊 魔教の黙示 戦争と花嫁

 シリーズ最新作です。

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2006年10月27日 (金)

9冊目 謎のクイン氏

珍しく、短編集を紹介します。アガサ・クリスティーの作品を読んだことのある人も、この本は読んでいないのではないでしょうか?

評価:星4つ ★★★★

アガサ・クリスティーの創造した探偵というと、ポアロやマープルなどが有名ですが、このハーリ・クインはまったく異質な存在です。 こんなタイプの探偵は他にはいないと思います。

積極的に事件を捜査するわけでもなく、腰掛探偵のような椅子に座って推理するわけでもありません。 不思議な存在、道化役者(ハーリクイン)。

クインは自分で事件を解決するわけではなく、他人の話を聞き、それとなくヒントを与え、口に出したものの、特に意識していなかったことに対して、まったく別の角度から光を当てるのです。 その瞬間、思いもよらぬ事件の真相が暴かれます。

もうひとつ特徴的なのが、事件が起こった現場に居合わせることはあまりなく、むしろ、事件から何ヶ月も、時には何年も!経ってから事件を解決してしまいます。 彼に言わせれば、「時が経てば経つほど、いっそう釣り合いの取れた見方ができるようになるものです。個々の事実の本当の関係がわかるというものです」ということらしいです・・。

そして、この物語の主人公といってもいいのが、サタースウェイト氏です。 歳は69歳で裕福で顔も広いが、家族もなく目立たない存在。 趣味は他人の人生を鑑賞すること。 聞き上手で観察眼にも優れています。

いつも傍観者として他人を眺めてきた彼ですが、クイン氏に出会って不思議な影響を受けて、人生という芝居の表舞台に、観客から出演者になる機会を与えられます。二人はコンビといってもいいでしょう。 彼の観察眼に、クインのヒントが加わり、事件が解決されていくのです。

加えて、作品のほとんどが恋人の物語でもあります。過去の出来事で誤解やすれ違いなどを起こして、もうどうしようもなくなった恋人たち・・・。 クインとサタースウェイトの活躍によって事件や謎が解かれるとともに、恋人たちが破綻から救われるのもこの作品の魅力かもしれません。

まあ、強いて難点を挙げれば、クインは超自然的な存在で、初めから謎が分かっているとしか思えないところでしょうか? 推理至上主義の人には減点ポイントかもしれません。 でも、そんなミステリアスな部分も私は気に入っています。

もともと、道化師は中世の宮廷にも仕える存在で、彼らはマジシャンの源流のひとつでもあります。 クインが不可思議な存在なのもうなずけますね(?) もっとも、クインは道化師よりマジシャンのほうが相応しい感じがします。

長編好きで、短編嫌いの私でも星4つをつけているこの作品。お薦めです!

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2006年10月24日 (火)

8冊目 夏への扉

今回はSFものです。ロバート・A・ハイライン著の「夏への扉」を久々に読み返してみました。有名な作品なので読んでいる方も多いと思います。

評価:星4つ ★★★★

SFと言っても、誰が読んでも楽しめると思います。1960年代に書かれたものなのに、今読んでもかなり面白い。星が4つなのは、5つ星を増やしすぎてもいけないと思って、かなり辛目に評価した結果です。猫好きだったら間違いなく最高評価になるでしょう。

最愛の恋人と親友に裏切られ、発明品まで奪われて人生に絶望してしまった主人公。大事にしている飼い猫のピートとともに、冷凍睡眠(コールドスリープ)を申し込む決意をする・・・30年後、西暦2000年まで。30年後の世界はどうなっているのか?そして、乗っ取られた会社は取り戻せるのか?

1960年代に書かれたので、1970年にすでに冷凍睡眠の技術があることになっています(まだかなり危険性があるようですが)。自動窓拭器や文化女中器(ハイヤード・ガール:自動真空掃除機)なんてものも主人公がすでにある技術を利用して開発しているので、現実の1970年代とはかなり違っています・・・冷戦が悪化して戦争もあったみたいだし。

そしてその30年後、2000年の世界はまさに昔考えられていた未来の世界像です。人々の暮らし自体はそれほど変わっていないけれど、月や火星に旅行もいけるし、人工合成肉とか、召使ロボットや、研究段階ですがタイムマシーンもでてきます。

それと比べると、今は1960年代に考えられていたより進歩してないですねー。まあ、インターネットや携帯電話などはかなり発達していますけど。 2001年には木星に行き、2003年にはドラえもんが誕生するはずでしたからねえ(w

この物語、主人公の時間を越えた冒険も楽しいのですが、飼い猫のピートに対する愛情(猫も活躍します!)たっぷりに描かれています。タイトルの「夏への扉」も、冬の寒いときに猫のピートが、家の扉のどれかが暖かい夏へと続く扉なんだと信じて、納得するまで家中の扉を順番に開けさせる・・・というエピソードからつけられています。

さて、主人公は「夏への扉」を探し当てることができるでしょうか?アクシデントで生き別れた猫のピートの運命は?

晴れた夏の日のような、さわやかな読後感。SFですが、誰でも楽しめるお薦めの本です。

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2006年10月15日 (日)

7冊目 氷の天使

女刑事、マロリーシリーズ第1巻となる、キャロル・オコンネル著「氷の天使」を今回は紹介します。キャロル・オコンネルといえば、第一回目で紹介した、「クリスマスに少女は還る」の著者でもあります。

 評価:星5つ ★★★★★

私自身は、「クリスマスに少女は還る」よりもこちらのマロリーシリーズを先に読んで、キャロル・オコンネルのファンになりました。

物語は、マロリーの育ての親である刑事、マコーヴィッツが連続殺人事件捜査中に犯人に殺されてしまったところから始まる。優秀な刑事だった彼がなぜ人気のないビルでの単独調査などという無謀なことをしたのか?老婦人ばかり狙う犯人の意図は?マロリーはマコーヴィッツの仇を求めて独自の捜査を開始する。

物語の主人公、女刑事マロリーのキャラクターはかなり強烈な印象を与えてくれます。ニューヨーク市警において女性で刑事というだけでもすごいですが、天才的な頭脳と鮮烈な美貌を持ち、強力な銃をいつも身につけてます。それでいながら、他の人間と馴染まず、誰も信用しない・・・まさに氷の天使

人間よりもコンピュータを信頼し、天才的ハッカーの腕前を駆使して、不法に情報を集めたりもします。彼女にかかれば、個人の銀行口座だって簡単に覗き見ることができてしまう。

他にも個性的な登場人物がたくさん出てきます。何かとマロリーのことを気にかけてくれる刑事仲間のライカーや、ずば抜けたIQを持ちながら人が良すぎてピエロを演じることも多い愛すべきチャールズ、マロリーを子供のときから知っている、一癖ある亡きマコービッツの親友たち・・。

周りの人間もマロリーの非人間的思考には困ってしまう。しかし、もし彼女の邪魔をしようとすれば、後で(もしくは即座に!)酷いしっぺ返しを喰らうことになります・・・。育ての父親と母親が亡くなった今、彼女に言うことを聞かせられる人物はほとんどいません(まあ、ライカーがなんとか、相棒として意見を言える程度・・・)。

そんな彼女と他人のやり取りもこの作品の面白さのひとつではないでしょうか?連続殺人の方も気になりますが、彼女がなぜこのような人間になったのかという、過去の出来事に興味がわいてきます。その話は、シリーズ4作目の「天使の帰郷」で詳しく語られます。

この作品に限らず、キャロル・オコンネルの作品には心に何らかの病や障害を持った人々が出てきて、その心情がよく描かれています。人間の内面という部分に重点をおいているんでしょう。

「へええ、そう。」という、マロリーの半分相手を馬鹿にしたような台詞や、ときどき入る太字で書かれた独白部分には思わずニヤリとしてしまいます。

ラストの急展開にはハラハラしますが、読み終わったとき、あなたもマロリーのファンになっているのではないでしょうか?

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2006年10月13日 (金)

6冊目 奇術師の密室

マジックに興味はありますか?いつも昔に読んだ本を紹介してましたので、今回は最近読んだ、リチャード・マシスン著の「奇術師の密室」をとりあげます。

 評価:星3つ ★★★

この本を一言で表現するなら、どんでん返しの連続!です。展開もスピーディーで、100ページまで一息もつかずに一気に読んでしまい、通勤の電車でしか読んでいないのに、3日で読み終わってしまいました。

冒頭、ミスターキャベツなる人物からの挨拶があります。この本の主人公は偉大なマジシャンのなれの果て・・・水中脱出の際脳溢血を起こし、植物(キャベツ)人間になってしまった老人が語り手なのです。

植物人間になって目を動かすことしかできなくなったにもかかわらず、あまり悲惨さを感じさせません。割と元気みたいです。

そんな老マジシャンは息子とその嫁、嫁の弟と同居しています。車椅子に座るだけの存在ですが、息子は「マジックルーム」と呼ばれる奇術道具がいっぱいの部屋へいつも車椅子を押していってくれます。

そんなある日の出来事を書いているのですが、そこからがまったく奇想天外、本物のマジック顔負けの予想のつかない展開の連続です。

登場人物は、老マジシャン、父を継いで偉大なるマジシャンとなった息子のマックス、美人な妻カサンドラ、同居している妻の弟ブライアン、マックスのマネージャーのハリー、地元保安官のグローヴァーだけ。物語はは全て「マジックルーム」の中で進行していきます。

まず、カサンドラとその弟ブライアンが何か良からぬことを企んでいるシーンから始まり、次にハリーが登場し、カサンドラと不倫関係にあることが判明します。そして、突如その場所に夫のマックスが現れます(劇的に・・・)。

この時点ですでに嵐の予感です。でもまだほんの序章。父である老マジシャンの座を継いだ偉大なるマジシャン、マックスはなぜか体の具合が悪く、マジックも以前の用にできなくなっています。そして破れかぶれなのか、マジックショーを演じているのかまったく分からない狂ったような行動に走りだす!

作中では、マジックの原理や考え方などにも触れています。ネタバラシにつながる部分も若干ありましたが、う~ん、許容範囲なのかな・・・・。ステージでの立ち振る舞いとか、なかなかマニアックな内容も。手品をやったことのない人も、マジシャンがどんなことに気をつけているかが少し分かるのではないでしょうか?

起こった事件だけを見れば、醜い人間の壮絶な争いで実際殺人も起こります。でも奇術師が絡むことによってどれが現実で、どれが幻想なのか分からないまま、次々と展開していくので、成り行きを見守ることしかできない老マジシャンの言葉を借りれば、「気持ちはヨーヨーのごとく宙ぶらりんだ。あがったりさがったり、出たり入ったり・・・」といった感じです。本当に最後まで油断できません。

ラスト、この前代未聞の残酷な物語が終わったとき、ささやかな奇跡が起こります。読者を散々振り回す物語ですが、次にどちらに曲がるか分からない、まるでスペースマウンテン(ディズニーランドのジェットコースター)に乗ったような爽快感が味わえるのではないでしょうか。

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2006年10月11日 (水)

5冊目 お師匠様は魔物!

今までブログで取り上げた本を見返してみると(ウェブ進化論は別として)、ハッピーエンドの物語がない!と、いうことで、今回はロバート・アスプリン著のマジカルランドシリーズ第1巻の「お師匠様は魔物!」です。

評価:星4つ ★★★★

まず、この本を電車で読むことをお薦めしません。なぜなら、笑いをこらえるのがすごく大変だからです。かなり昔に発刊された本なので、今は休み休み発行しては計14巻くらい出てるのでしょうか?

著者のロバート・アスプリンは、1946年生まれのアメリカの作家で、他の代表作には、爆笑SF「銀河お騒がせ中隊」(早川文庫SF)などがあります。

1作目に当たる本作では、見習い魔法使いの主人公、スキーブとその仲間たちがどのようにして出合ったか、そしてドタバタ劇を繰り広げていくのが語られます。 もちろん、話自体はきりよく終わってます。

ある日、突然襲ってきた殺し屋と、スキーブの師匠が相打ちにとなってしまいます、師匠が強力な魔物を召還する途中で・・・。 術は止まらず、見たこともないような恐ろしい魔物が召還されてしまう! ところが・・・この魔物、生前の師匠とある契約をしていただけで(それを言ってしまうのもつまらないので伏せておきます)、しかもトラブルで魔法が使えなくなり、自分の世界へ戻れなくなってしまいます。

この魔物の名前がオゥズと言いますが、「おいおいぼうず、落ち着けよ。噛み付きゃしないよ。」なんてフレンドリーな会話をしてくるのです。 オゥズに言わせれば、魔物とは違う次元へ来た人のことで、逆に人間が他の世界へ行ったらそこでは魔物扱いされるとのこと。

そんな奇妙な出会いから、二人の珍道中が始まります。オゥズは魔力を取り戻し、元の次元に戻るために。スキーブは一人前の魔法使いになるために。

何にでも口を挟みたくなるスキーブと、ぶっきらぼうで強引でガメついけれど、どこか憎めないオゥズ。

このおとぼけコンビのやり取りがとても笑える。 特に、オゥズが強引なハッタリと頭脳プレーでピンチを切り抜けるのには痺れます(w。 恐ろしい武器を持った殺し屋とバッタリ出くわしても、作戦がことごとく破れ、絶体絶命の時でも口八丁手八丁、「おぅともよ!話せば長いことでね!」と持ち前の口調でたたみかけ、形勢を逆転させてしまいます。

主人公のスキーブも、最初は頼りないですが、物語が進むにつれ成長していきます。何より、不思議な魅力があって、オゥズや他の仲間も自然とスキーブに惹かれるようです。

また、このシリーズはダジャレが満載で(あとがきに書いてありますが)、「Another Fine Myss(またしてもとんでもない神話)という原文のタイトルさえ、ハリウッドのローレル&ハーディのキメ台詞、「This is another fine mess you've gotten us into」(まとぞろやっかいなことになったぜ)という台詞との、Myss(神話)とmess(はちゃめちゃ)をかけたダジャレになってるとのことです。ダジャレで有名なピアズ・アンソニ著「魔法の国ザンス」に負けてはいません。

とにかく笑えます!ファンタジーが好きでない人にもお勧めする一冊です。

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2006年10月 9日 (月)

4冊目 ウェブ進化論

私がブログを始めるきっかけとなった本、梅田望夫著の「ウェブ進化論」-本当の大変化はこれから始まる-を今回は紹介します。

評価:星3つ ★★★

前々から、書店に並んでいて興味を惹かれていましたが、最近になってようやく購入しました。この本を読んでブログを始める気になったのですから、かなりの影響を受けたのを分かっていただけるでしょうか?

章の構成は、序章:ウェブ社会から始まって、グーグル-知の世界を再編成する、ロングテールとWEB2.0、ブログと総表現時代、ウェブ進化は世代交代によって~などの項目が並びます。

「ちょっと難しそうだな」と、思われるかもしれませんが、内容はネットをやったことをある人なら(初心者でも)とても分かりやすく、今インターネットの世界では何が起ころうとしているのかが伝わってきます。

特に、グーグルやアマゾンドットコムのやっていること、そしてこれから目指そうとしていることを読んだ時は、目からうろこというか、新しい世界が見えた気がしました。

グーグルに対しては、単にヤフーを抜いて一番有名になった検索サイト、というくらいの認識でした。はっきり言ってこの本読むまでグーグルアースで自分の家の航空写真が見れることすら知らなかった(w

Googlemap 

東京タワーを表示してみました。最近は航空写真に地図も反映されて見やすくなってます。

自分の家もかなり鮮明に見れることが分かり、便利な反面、住所がバレると家の様子も分かる時代なのかとちょっと不安・・(w

アマゾンドットコムは以前から本やDVDを買うのに利用していましたが、この本のロングテールの理論を読んで本当の意味が分かった気がしました。

アドセンスアフィリエイトを詳しく知ったのもこの本のからです。もちろん、一般に出回っているブログで儲けよう的な本ではありませんので、方法論について書いてあるわけではありません。

しかし、一般的にはHPの広告にあまり肯定的な意見がないことに対して、グーグルによる「富の再配分」のところを読むと、今までマスコミや一部の権威にしか許されてこなかった分野が、パソコンとインターネット環境があれば誰もが参加できるようになったことがどういう事なのかが書かれていて、新しい観点で見れるようになりました(まあ、広告ばっかりなサイトはどうかと思いますけど・・)。

WEB2.0の話はこれから来る将来の話でもあるため、はっきり理解できたわけではありませんが、まさに、「新しいことがインターネットで起こっている一方、私たちは相変わらず、テレビを見て新聞を読み、雑誌を買い~長い時間をかけて緩やかに起こるものである~気づいたときには色々なことがもう大きく変わっていた」と感じるときがやってくるのでしょう。

「自分には別に情報発信することなんてない」と思っていた自分を変えたこの一冊。ぜひお薦めします。

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2006年10月 7日 (土)

3冊目 エルリックサーガ 「メルニボネの皇子」

エルリックサーガの第一巻で、マイケル・ムアコック著です。もっとも思い入れのある作品で、もう少し後で記事を書こうかと思っていましたが、ハンドルネームにしているくらいなので今回とりあげます。

評価:星5つ ★★★★★

マイケル・ムアコックの四英雄(エターナルチャンピオン)シリーズの中でも最も有名な代表作です。私は高校生の頃この本と出合い、その秀麗でありながらアイロニー(冷笑的な)たっぷりの文章表現、法(ロー)と混沌(カオス)の均衡のテーマ、剣と邪悪な魔法、魂を飲み干す魔剣「ストームブリンガー」などにすっかり心奪われ、一時期は代表的な台詞はすべて暗記してしまっていたほどハマリました(性格に良い影響を与えたとは思えませんけど・・・)。

エルリックサーガは、かつて光の帝国と称えられ、一万年もの間全人類を支配下に置いた、メルニボネ帝国の最後の皇帝であるエルリックの物語です。 「黒の剣の年代記」から引用すれば「途方もない規模の葛藤と、気高き野望の物語。魔術と裏切りと、価値ある理想の、苦痛と恐るべき歓喜の、苦き愛と甘き憎しみの物語である。これは、メルニボネのエルリックの物語。エルリックはその大半を、悪夢の中でしか回顧できぬであろう。と記されている物語です。 ここの苦痛と恐るべき歓喜、葛藤と野望、苦き愛と甘き憎しみという相反するものが混ざり合う表現がかなり好きです。

「メルニボネの皇子」では、帝国の力も徐々に弱まる中、アルビノで体も弱いエルリックとその従弟であるイイルクーンの覇権争い、エルリックが愛していた従妹サイモリルの誘拐と奪還、地獄の大公アリオッチとの契約、そしてなぜエルリックが地獄の魔剣、ストームブリンガーを持つに至ったかが語られます。

主人公のエルリックは、魔術の知識では誰にも引けを取りませんが、上でも述べたように、生まれつき体が弱く、薬草無しでは生きていくことすらできません。それまでのファンタジー小説のヒーローといえば、ロバート・E・ハワード著「コナン」のように筋骨隆々とした野蛮な戦士タイプが多かったのに対してまったく逆をいってます。

そして、メルニボネ人は全体的に残虐で、混沌を信仰してるような種族です。エルリックはその中では異端とされますが、それでも人間から見れば十分残虐で、ダークヒーローが流行った大元となってます。”従妹殺しのエルリック”、”同族殺し”、”魂の盗人”と後に呼ばれるエルリック。

混沌の神々に裏切られ、不信感を持ちながら、法の神々にも違和感を感じ、使い手の友人や恋人の魂を最も好む暗黒の魔剣、ストームブリンガーを憎みつつも手放せない、苦悩し続ける運命。

よりよき世界を目指しながら、逆らえない運命に弄ばれ、世界を巻き込む法と混沌の争いに向けてエルリックは様々な冒険と人との出会いと別れを繰り返していきます。

D&D(ダンジョンズアンドドラゴンズ)のインテリジェンスソードなんかはこの本の影響を受けたのではないでしょうか?とにかくエルリックサーガがその後のファンタジー界に与えた影響は計り知れないでしょう。余談ですが、SNKの格闘ゲーム、キングオブファイターズに出てくるハイデルンの使う必殺技「ストームブリンガー」ってそのまんまですね(w敵の体力吸い取るし・・

この本は万人にはお薦めできません(w ハッピーエンド、楽しい物語を求める人にはまったく向かないと思います。 しかし、もしハマったりすると貴方の人生に多大な影響を与えるかもしれない・・・そんな本です。

ちなみに、上のほうの画像の本はもう絶版になってるようです。そして最近になって復刻版がでました!同じ早川書房からで、1冊に以前の2冊分が収録されているようです。 ざっと見ますと、時系列順に話を並べ替えたり手が加えられている感じです。ですが・・・・自己評価は残念ながら星4つ・・・なぜって、本の表紙の絵が天野喜孝の絵でなくなってるのが残念だからです・・・高校生の頃から天野喜孝の絵でイメージしていただけに、やはりなじめないですね・・・。もっとも、これから読む人ならば、先入観なくていいのではないでしょうか。 ちなみに、原作の絵は骸骨のお化けみたいらしい・・・・

11冊目でエルリックサーガ最終巻「ストームブリンガー」について感想を書きました。よろしければ、そちらもご覧になってください~。

関連リンク(ブログ内)

25冊目 エレコーゼサーガ「剣の中の竜」

11冊目 ストームブリンガー

13冊目 紅衣の公子コルム

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2冊目 そして誰もいなくなった

前回に紹介しかけたので、今回はアガサ・クリスティ著の「そして誰もいなくなった」です。

評価:星5つ ★★★★★

ミステリーの女王、アガサ・クリスティの代表作の一つで、有名すぎていまさら紹介するのもためらわれますが、自分の好きな本を紹介していく以上、この本もはずせません。

それぞれ見も知らぬ10人の男女が孤島に招待されるが、その島での最初の夕食時に、録音機から10人がそれぞれ過去に殺人を犯していると告発されます。そこから一人づつ見えない犯人に殺されていく・・・古いインディアンの子守唄になぞらえて・・・。

ここまで読んで、「よくあるパターンじゃないか!」と思った方、このパターンは「そして誰もいなくなった」が初めてなんです!(厳密に調べてませんけど、おそらく)

犯人はこの中の誰かか?、という緊張感と次第に減っていく招待客、今ではありがちな話ですが、やっぱりスリリングで面白いですよね。人数が減るにつれてあいつが犯人?あれ、違う・・みたいに誰もがあやしく思えてしまう。

犯人とトリックは最後に明かされます(エピローグで)。これについては賛否両論ですが、トリックが論理的で読者にもパズルのように解く機会が与えられなければならないと思っている人には、「邪道」と言われるのでしょう。しかし、逆に、どんなにすばらしいトリックでもそもそものストーリーがつまらなくては本末転倒だと思います。

本格推理という分野からは異端視されるのでしょうけど、私はアガサ・クリスティの作品の中で一番好きな作品です。(問題作の「アクロイド殺し」も好きですが・・)

最後に、子守唄の10番目を引用して締めくくります。

『 一人のインディアンの少年が後に残された。彼が首をくくり、後には誰もいなくなった 』

果たして、ラストはどうなるのでしょうか!? 読んでいない人はぜひお薦めします。

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2006年10月 4日 (水)

1冊目 クリスマスに少女は還る

最初に 紹介するのは、キャロル・オコンネル著の「クリスマスに少女は還る」です。

評価:星5つ ★★★★★

キャロル・オコンネルの作品は、刑事マロリーシリーズを読んでファンになりました。この本はずっと前に読んだのですが、他の紹介文を見てもかなり高評価を得ていると思われます。

ストーリーは、クリスマスを控えた町で二人の少女が誘拐され、刑事が捜査に乗り出す一方、誘拐された少女たちも監禁状態から必死で脱出を試みる話です、と書いてしまうと、ありがちな話に思えてしまいますね。しかし、それは違います。

この物語はミステリーであり、推理小説であり、脱出を試みる少女たちの物語でもある・・そしてホラー?(読んだ人ならわかりますよね)でもある・・・。

まず、主人公格の少女、サディー・グリーンの際立ったキャラクター。ホラー好きで、いたずら好き、衣服から自転車まで紫づくしの問題児。でも、憎めない、ウィットに富んだ少女。作り物の矢を胸に刺し、血糊つけて死んだ振りをして騒ぎを起こしたりと、とんでもないことを平気でやりますが、この本を読み終わるころには、誰もがサディーを好きになるのではないでしょうか。

もう一人の少女グウェンは、州副知事の娘でサディーに比べたらまったく普通の娘(でも後述するように、本当は芯がすごく強いのかも・・)。本を読んだのがかなり昔なので、刑事のルージュはいまいち記憶にありません・・すみません。でもこういったキャラクターそれぞれがとても個性的に、丁寧に描かれています。

そして、捕われた少女たちの運命をハラハラしながら読み進めていくと、ラストにすごい衝撃が待っています。このラストはちょっと想像つかないでしょう。私にとって、子供のころアガサクリスティの「そして誰もいなくなった」を読んだとき以来の衝撃でした。

クリスマスに起こる奇跡・・・。

このラストをどう解釈するかは、読者にゆだねられている点もこの本が長く記憶に残る要素でしょう。個人的には、やはり、最初から独りだった(ネタばれになるのでこれ以上書けませんが)と思ってます。

なぜなら、キャロルの他の作品でも「人のこころ」の問題、その深さをテーマの一つに置いているように感じるからです。極限状態の人の心理。このことから、グウェンって芯が強いのかな・・と感じてしまう。

エピローグの神父と母親のシーンで、サディーに対する親近感や様々な感情が押し寄せてきます。もちろん、ラストを私と違う解釈をした人はまた感じ方が異なるのかもしれません。

最近読んだミステリーで、この本以上に人にお薦めできるものはまだないかなー、と思いますので、ミステリファンなら必読、そうでない人にもぜひ!読んでもらいたいです。

ちなみに、本の画像をクリックすると購入できるサイトへジャンプしますのでよろしければ・・なんてずうずうしく言ってみたりして・・・(w

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