25冊目 エレコーゼサーガ「剣のなかの竜」
マイケル・ムアコックの永遠の戦士シリーズの核をなす、 「エレコーゼサーガ」がハヤカワ文庫から復刊されました! 題名は旧巻では2巻目にあたる「黒曜石の中の不死鳥」となっています。 それを記念して(って大袈裟ですが)今回はエレコーゼサーガ最終巻にあたる「剣のなかの竜」を紹介します。
(*図は旧巻のものです)
評価:星5つ ★★★★★
第1巻「永遠の戦士」、第2巻「黒曜石の中の不死鳥」もいずれ機会があったらご紹介したいと思いますが、個人的に第3巻にあたる「剣のなかの竜」が最も優れた作品だと思っていますし、長編で読みごたえもあるため、こちらの感想を先に書く次第です。
また、一応「黒曜石の中の不死鳥」の話の続きから始まる形ですが、エレコーゼの話は毎回転生するので、この巻だけでも十分楽しめます(マイケルムアコック初めてという場合は厳しいでしょうけど・・・)。
さて、今回エレコーゼが呼び出される世界は、6つの違う次元をそれぞれ行き来できる世界です。 この世界での英雄であるフラマディンという人物になる訳ですが、今回は単純な英雄物語ではありません。
しばらく経つうちに徐々に明らかになるのですが、フラマディンには双子の妹がおり、実質的には妹のシャラディムが実権を握っており、それに抵抗したフラマディンは永遠に国外追放されたお尋ね者なのです。
英雄として常に戦ってきたエレコーゼとしては意外な展開で、この後登場するエルミザードそっくりのヒロイン、アリサードともいまいちうまくいきません。 英雄の介添人役のフォン・ベックとアリサードの仲に嫉妬するところまで墜ちてしまいます(w
混沌の手を借りて世界を征服しようとするシャラディム姫にエレコーゼ達は対抗できるのでしょうか?
ラストも今までの永遠の戦士の物語とは違った終わりを迎えます。 なぜなら、この作品は「ブラス上年代記」の第3巻で永遠の戦士シリーズが一応の終わりを迎えた後に書かれた物語で、ムアコック自身の考え方も以前の人間に否定的なものから、英雄への懐疑、人間の再評価というものに変わってきているからです。
物語の後半で、英雄という役目に縛られ、潰されそうになったエレコーゼに対して、フォン・ベックが言います。 「あんたの身に起きたことを変えることはできまい。だが、あんたが何になったかは変えることができる ~ あんたは、自分がなったものを、変えることができるんだ!」 この言葉が今回の重要なテーマになっていて、この選択を誤れば悲惨な運命が待っていたかもしれません。
他にも結構名言があって、「人間一番腹を立てるのは、物事を自分に都合よく誤認していたことに気づいたときだというが、まことにもってそのとおりだな!」など、諧謔(かいぎゃく)精神にあふれる台詞も楽しみの一つです。
今までのエターナルチャンピオンシリーズとは違うコンセプトとはいっても、いつもの法と混沌と天秤という話は変わらないですし、セピリズや曲がりのジャーメイスといったお馴染のキャラクターも出てきます。
他にも、6つの世界が舞台のため、人間のほかに食人の習慣があるという「亡霊女」や、太古から存在する(なんと、宇宙のサイクルを4サイクルも経験した)「熊の王族」など、様々な種族が登場するほか、混沌の中心でも歪曲されず、法の存在であることを貫き通すユニコーンや、聖杯、最後の戦いのためだけに生き続ける「時の果ての戦士」なども出てきます。
また、最後は混沌の大公爵、バラリザーフとの壮絶な戦いも描かれ、エルリックサーガに繋がる物語として、「王の指輪」や「ストームブリンガー」、「モーンブレイド」がどのようにして生まれたのか、メルニボネの祖先がどのような人々だったのかを暗示させる部分もあり、ファンとして見逃せないストーリーとなっています。
ラストは、友人の誘いを断って、あれが正しい選択なんだろうな・・・とは思うものの、どことなく寂しい感じですね。 でも、ついていっても、あの後メルニボネに続くのか・・と思うと微妙ですが(w ジョン・デイカーとはムアコックの分身みたいなものなんでしょうか。
追記
書店に行ったら、もう新刊版がでていました。ちらっと見た感じでは、内容は手を加えてない感じです。 旧版を持っていない方はお薦めです。
まだアマゾンの検索では新刊が出ていないみたいですが、ハヤカワオンラインで購入できます。>>新刊版のアマゾンへのリンクを追加しました。
関連リンク(ブログ内)
剣のなかの竜(新版)
剣のなかの竜(旧版)
黒曜石のなかの不死鳥
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» 「剣のなかの竜」マイクル・ムアコック 井辻朱美訳 ハヤカワ [目次が日本一のブログ(自称w挑戦者求む)]
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