11冊目 ストームブリンガー
エルリックサーガ第6巻(新版では4巻)にあたる本作(マイケル・ムアコック著)は、最終話が収められています。 「メルニボネの皇子」でまだエルリックサーガを語り足りなかったので新設しました(w
エルリックサーガ最終章に相応しい、壮大なストーリーとなっています。
5巻「黒き剣の呪い」でザロジニアを妻として娶り、辺境の王国カーラークにようやく愛と平安を手に入れたエルリック。 呪われた剣、ストームブリンガーを最後海へ捨てたのですが、剣はひとりでにカーラークの武器庫に戻ってきています。
物語の冒頭で、混沌の手先がエルリックの元へ送り込まれ、最愛の妻ザロジニアが誘拐されてしまいます。 黒魔術で敵の死体から情報を得たエルリックは、再び武器庫に保管されている魔剣ストームブリンガーを手に取り、戦いへと乗り出していきます。
今までよりかなりの強敵がつぎつぎ現れます。 なにせ、神々と戦うんですから・・。 そして、エルリックの宿敵となるパン・タンの神官ジャグリーン・ラーンもなかなかの強敵です。 混沌の神々から恩恵を受けているので、ストームブリンガーの恐るべき攻撃もかわしてしまうのです。
混沌が勢力を伸ばす中、エルリックを助けるのが、セピリズが代表する「十者」と呼ばれる「運命(フェイト)」に仕える者たちで、助言を与え、1巻から姿を消していたストームブリンガーの片割れの魔剣、モーンブレイドを授けます。
モーンブレイドはエルリックの同胞、ディビム・スロームが持つのですが、この2本の剣は凄まじい力を発揮します。 そして、ストームブリンガーの秘密が語られ、この剣の無数の兄弟たちに助けを呼ぶ呪文も伝えられるのです。 さらに後半、混沌の盾という、究極の盾も手に入れます。片手にストームブリンガー、もう片手に混沌の盾を装備してまさに無敵状態に(w
ジャグリーン・ラーンが呼び出した地獄の公爵たちの圧倒的な力にエルリックは立ち向かえるのでしょうか? 公爵の中には、メルニボネ人が崇めてきた、今までエルリックの守護魔人であったアリオッチすら含まれるのです!
混沌の影響で大地はうねり、変化の波に飲まれると人も物も永久に姿かたちを歪められてしまい、まさに世界の終末のようになっていきます。 最愛の妻ザロジニアを一度は取り戻すものの、その後あまりに悲惨な運命が待っています。 結局、エルリックら永遠の戦士にとって休息は一時のものなんでしょうね・・・ザロジニアは、恋敵であるストームブリンガーに負けたとも言えるかも・・。
登場人物も満足できるものがあります。 親友、ムーングラムはもちろん、赤き射手ラッキール、竜洞の支配者ディビム・スロームがともに戦い、終盤では竜や法の神々も登場します。 ラストに相応しい豪華キャストですね。
ラストは当然ハッピーエンドではありません(w しかし、バッドエンドとも言えない・・・ある意味では勝利とも呼べるかもしれません。 でも、エルリックサーガのファンであれば納得できるのではないでしょうか? 古い時代から新しい時代へ、混沌と法のバランス・・・ストームブリンガーの真の姿は謎のままです(エレコーゼサーガ第3巻「剣の中の竜」で少し語られます)。
「ストームブリンガー」での基本思想は、今でこそありふれたものかもしれませんが、法(ロー)と混沌(カオス)の均衡です。 「法」は秩序をもたらしますが、同時に停滞を招きます。「混沌」は変化と無限の可能性を与えますが、混乱や無秩序をもたらします。 両者がバランスよく釣り合ってこそ(ある程度法の側に偏って)、世界がうまく成り立つ。
また、宇宙は基本的に不公平なもので、人間はその中で自ら秩序を打ち立てていかなければならない。 平和は与えられるものではない。 そんなメッセージが込められているように感じます。 本書を最後まで読んだ人ならば、もしかすると、今の世界があるのはエルリック達の尊い犠牲のおかげかもしれないと感じるでしょう(あくまでお話と割り切ればそれまでですけど・・)。
個人的に、ラストの壮大な戦いに合う曲として、ショスタコービッチの交響曲第5番ニ短調作品47「革命」第4楽章を聞きながら読んでみたりしてます。 壮大でありながらどこか悲壮な感じの曲がストーリにマッチしてると思うのですが・・・・将来映画化されることがあれば、使ってほしいです(w
ここで、今販売されている新版の方ですが・・・。カバー絵が天野喜孝でないのはしょうがないとして、なんでしょう?物語の順番がちょっと変な気が・・旧版の初めのほうに出てきたショートストーリーの冒険が突如でてきて、旧版に慣れた私はちょっと・・・。 そして!これが一番感じましたが、「アリオッホ」ってなんですか?なんかすごくかっこ悪いんですけど・・・地獄の大公は「アリオッチ」でしょうが!と言いたい・・・せめて、「アリオク」程度にでもしてくれれば・・・。
最後に、ある意味エルリックより有名となった魔剣ストームブリンガーについての描写をすこし書きます。
「黒い大剣からやわらかな呻きが発せられた。それは重く、完璧なバランスを保った、両手使いの長大な広刃の剣で、柄は横に長く、刃はなめらかに幅広く、柄から切っ先までは5フィート以上もあった。柄近くには神秘のルーン文字が刻まれ、エルリックでさえ、その意味が完全にわかるとは言えなかった。」 こんな剣だそうです。 6巻の最初に、天野喜孝のカラーの挿絵に描かれている剣こそ、私のイメージしているストームブリンガーです。
「またも、お前を使わなねばならぬか、ストームブリンガー」 エルリックは続けて言います。 「いまこそ、われらは、死以外に分かつものがないほどの絆で結ばれている、と言わねばなるまい」 と。
強大な力を持ち、使い手に魔界の活力を与えるものの、時には使い手の意思に反して人を殺す剣。 敗戦後、一緒に戦った仲間がいつのまにか見当たらなくてエルリックは聞きます。 「「気がつかなかったのか?」 「気がつく、何に?」 「ジャグリーン・ラーンの旗艦に乗りうつって、おぬしが主甲板へ行こうと切りまくっていたときだ。そのときのことさ、おぬし、自分のやったこと ― というか、おぬしの呪われた剣のやったことを知らんのか」 エルリックの全身にどっと疲労がこみ上げた。 「いや。わたしは ― わたしの剣は ― かれを殺したのか?」」
半ば憎しみながらも持ち続けなければならない魔剣。 敵に対する容赦ない復讐と失っていく友情・愛情・・そんな陰鬱なところもなぜか惹きつけられる作品なんですよね・・。
読んでいない方は、ぜひ1巻、「メルニボネの皇子」から読んでみてください。
あと、エルリックサーガに登場する人物の辞典をHPに作っている方がいました。 かなりマニアックです(w こちら、そろりんさんのHPへのリンク ブログもあるようです。
関連リンク(ブログ内)
関連リンク(外)
こちら、第3巻
さらに、第2巻
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» 『ストームブリンガー (永遠の戦士エルリック④)』 マイクル・ムアコック [固ゆで卵で行こう!]
著者:マイクル・ムアコック 訳:井辻 朱美
『ストームブリンガー―永遠の戦士エルリック〈4〉』
(ハヤカワ文庫)
<混沌>の神々を受け入れて新王国を征服せんと侵略を開始したパン・タンとダリジョールの二つの国が連合軍の前に、世界は屈しかけはじめた。
そ... [続きを読む]
受信: 2006年11月16日 (木) 22時21分






![マイクル ムアコック: 剣の騎士 [永遠の戦士 コルム1] (ハヤカワ文庫 SF―永遠の戦士コルム (1641))](http://ecx.images-amazon.com/images/I/11sLVwWDILL.jpg)







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