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2006年10月27日 (金)

9冊目 謎のクイン氏

珍しく、短編集を紹介します。アガサ・クリスティーの作品を読んだことのある人も、この本は読んでいないのではないでしょうか?

評価:星4つ ★★★★

アガサ・クリスティーの創造した探偵というと、ポアロやマープルなどが有名ですが、このハーリ・クインはまったく異質な存在です。 こんなタイプの探偵は他にはいないと思います。

積極的に事件を捜査するわけでもなく、腰掛探偵のような椅子に座って推理するわけでもありません。 不思議な存在、道化役者(ハーリクイン)。

クインは自分で事件を解決するわけではなく、他人の話を聞き、それとなくヒントを与え、口に出したものの、特に意識していなかったことに対して、まったく別の角度から光を当てるのです。 その瞬間、思いもよらぬ事件の真相が暴かれます。

もうひとつ特徴的なのが、事件が起こった現場に居合わせることはあまりなく、むしろ、事件から何ヶ月も、時には何年も!経ってから事件を解決してしまいます。 彼に言わせれば、「時が経てば経つほど、いっそう釣り合いの取れた見方ができるようになるものです。個々の事実の本当の関係がわかるというものです」ということらしいです・・。

そして、この物語の主人公といってもいいのが、サタースウェイト氏です。 歳は69歳で裕福で顔も広いが、家族もなく目立たない存在。 趣味は他人の人生を鑑賞すること。 聞き上手で観察眼にも優れています。

いつも傍観者として他人を眺めてきた彼ですが、クイン氏に出会って不思議な影響を受けて、人生という芝居の表舞台に、観客から出演者になる機会を与えられます。二人はコンビといってもいいでしょう。 彼の観察眼に、クインのヒントが加わり、事件が解決されていくのです。

加えて、作品のほとんどが恋人の物語でもあります。過去の出来事で誤解やすれ違いなどを起こして、もうどうしようもなくなった恋人たち・・・。 クインとサタースウェイトの活躍によって事件や謎が解かれるとともに、恋人たちが破綻から救われるのもこの作品の魅力かもしれません。

まあ、強いて難点を挙げれば、クインは超自然的な存在で、初めから謎が分かっているとしか思えないところでしょうか? 推理至上主義の人には減点ポイントかもしれません。 でも、そんなミステリアスな部分も私は気に入っています。

もともと、道化師は中世の宮廷にも仕える存在で、彼らはマジシャンの源流のひとつでもあります。 クインが不可思議な存在なのもうなずけますね(?) もっとも、クインは道化師よりマジシャンのほうが相応しい感じがします。

長編好きで、短編嫌いの私でも星4つをつけているこの作品。お薦めです!

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